本県には有名な遺跡等が多く存在し,それに伴う出土品も,貴重な考古資料として数多く存在します。しかし,国の重要文化財(考古資料)として指定されたものは,ここ上野原遺跡の出土品と南種子町の広田遺跡の出土品(2件),そして今回紹介する鹿児島市の前原遺跡出土品の合わせて4件しかありません。
前原遺跡は,平成3年度から8年度まで当センターが発掘調査を行い,縄文時代早期前半期(約9,500年前)の竪穴住居跡が25基検出されるなど,縄文集落の様子を知る上で貴重な遺跡です。その貴重な遺跡から出土した遺物が,県内の数少ない国重要文化財(考古資料)に指定された理由は,その形状の特徴にあります。
一般的に,土器の形状は,上から見ると円形・・・すなわち円筒形というイメージがありますが,前原遺跡から出土した土器は,円筒形だけではなく,角筒形のものやレモン形のものが多く出土しました。特に,貝殻で文様を施した四角柱状をなす「貝殻文角筒土器」は,全国的にも例がほとんどなく,南九州の縄文時代早期土器の特徴として注目されました。また,これらは,器形や文様の違いから8つの段階に分けられ,早期土器の変遷を考える上で貴重な資料であります。
また,下の写真の通り,遺存状態の良好な個体が多いというのも,高評価を得た要因の一つではないでしょうか。
これらの土器は,現在「上野原縄文の森」にて常設展示されていますので,是非,皆様も当時の人々の高度な土器作成技術の証しを一度御覧いただけたらと思います。
参考文献「かごしま文化財事典」鹿児島県教育委員会発行(平成14年)
「鹿児島県立埋蔵文化財センター発掘調査報告書(107)前原遺跡」(平成19年) |