鹿児島県上野原縄文の森トップページ
  •  平成25年9月2日(月) 
     
     前原遺跡出土土器(まえばるいせきしゅつどどき) 〜鹿児島県の国重要文化財〜(  かごしまけん くにじゅうようぶんかざい)
     
     本県(ほんけん)には有名(ゆうめい)遺跡等(いせきとう)(おお)存在(そんざい)し,それに(ともな)出土品(しゅつどひん)も,貴重(きちょう)考古資料(こうこしりょう)として数多(かずおお)く存在します。しかし,国の重要文化財(考古資料)として指定(してい)されたものは,ここ上野原(うえのはら)遺跡の出土品と南種子町(みなみたねちょう)広田(ひろた)遺跡の出土品(2(けん)),そして今回(こんかい)紹介(しょうかい)する鹿児島市(かごしまし)の前原遺跡出土品の()わせて4件しかありません。
     前原遺跡は,平成(へいせい)年度(ねんど)から8年度まで(とう)センターが発掘調査(はっくつちょうさ)(おこな)い,縄文時代早期前半期(約(じょうもんじだいそうきぜんはんき やく)9,500年前)の竪穴住居跡(たてあなじゅうきょあと)が25基検出(きけんしゅつ)されるなど,縄文集落(しゅうらく)様子(ようす)()る上で貴重(きちょう)な遺跡です。その貴重な遺跡から出土した遺物(いぶつ)が,県内(けんない)数少(かずすく)ない国重要文化財(考古資料)に指定された理由(りゆう)は,その形状(けいじょう)特徴(とくちょう)にあります。
     一般的(いっぱんてき)に,土器の形状は,上から見ると円形(えんけい)・・・すなわち円筒形(えんとうけい)というイメージがありますが,前原遺跡から出土した土器は,円筒形だけではなく,角筒形(かくとうけい)のものやレモン形のものが多く出土しました。(とく)に,貝殻(かいがら)文様(もんよう)(ほどこ)した四角柱状(しかくけいじょう)をなす「貝殻文角筒土器(かいがらもんかくとうどき)」は,全国的(ぜんこくてき)にも(れい)がほとんどなく,南九州(みなみきゅうしゅう)の縄文時代早期土器の特徴として注目(ちゅうもく)されました。また,これらは,器形(きけい)や文様の(ちが)いから8つの段階(だんかい)()けられ,早期土器の変遷(へんせん)(かんが)える上で貴重な資料(しりょう)であります。
     また,下の写真(しゃしん)(とお)り,遺存状態(いぞんじょうたい)良好(りょうこう)個体(こたい)が多いというのも,高評価(こうひょうか)()要因(よういん)(ひと)つではないでしょうか。
     これらの土器は,現在(げんざい)「上野原縄文の(もり)」にて常設展示(じょうせつてんじ)されていますので,是非(ぜひ)皆様(みなさま)当時(とうじ)人々(ひとびと)高度(こうど)な土器作成技術(さくせいぎじゅつ)(あか)しを一度御覧(いちどごらん)いただけたらと(おも)います。 
       参考文献(さんこうぶんけん)「かごしま文化財事典(ぶんかざいじてん)」鹿児島県教育委員会発行(きょういくいいんかいはっこう)平成(へいせい)14年)
           「鹿児島県立埋蔵(まいぞう)文化財センター発掘調査報告書(ほうこくしょ)(107)前原遺跡」(平成19年)
         
    前原遺跡出土土器 レモン形土器 貝殻文角筒土器
    ※ レモン形土器については,1月の「南の縄文調査室から」にも掲載しています。