本県の国指定重要文化財に指定されている建造物10件の中で,一番最初(昭和24年)に指定されたのが,伊佐市大田にある「八幡神社本殿」です。本殿は,柿葺屋根の木造建物で,過去に改修工事が行われたものの,500年以上もその原型をとどめている貴重なものです。
さて,本殿を見上げながら一周しますと,屋根下に8つある頭貫の木鼻と呼ばれる部分のうち,1つだけ上部が切り取られているのに気付きます。その切り取られた部分は,本殿内で大切に保管されております。何故でしょう。
実は,この裏側には,ある文章が墨で書かれており,解読すると,「施主が大変けちだったので一度も焼酎を振る舞ってくれなかった とてもがっかりした」という内容でした。これらの文字は,埋文センターの赤外線写真でよりはっきりと見ることができます。
今からおよそ450年前に,本殿修理を頼まれた大工が,施主に対して書いた愚痴のようです。注目すべき点は,その「焼酎」という文字が永禄2年(1559年)という年号とともに,はっきりと書かれてあるということです。現段階では,これが文献として残っている最古の「焼酎」という文字ではないかと言われおり,鹿児島の名産の一つである「焼酎」が,当時も一般的に使われていた言葉であることが分かります。
こうした落書のようなものは,全国的に結構見つかっているのですが,このように歴史資料に成り得るものは大変貴重であり,建物と併せて,まさに「珠玉の一品」と言えるでしょう。
参考文献「かごしま文化財事典」鹿児島県教育委員会発行(平成14年) |