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  •  平成28年6月3日(金)   
     クジラの骨でつくられた土器製作台〜市来貝塚〜
     市来貝塚は,いちき串木野市を流れる八房川の上流の台地にあり,縄文時代後期(今から約3,500年前)の貝塚で,県の史跡に指定されています。昭和36年,河口貞徳氏によって発掘調査が行われ,市来式土器をはじめ多数の土器・石器・骨角器が出土しました。
     写真の円盤形のものは,そのとき出土したクジラの脊椎板(せきついばん)です。直径24~27㎝,厚さ2㎝,中央に直径8~9.5㎝の穴があいており,土器の製作台として使われていたと考えられています。
     なぜ,このクジラの脊椎板が土器の製作台であったと考えられるのでしょうか。それは,市来貝塚から出土した土器の底に脊椎板特有のでこぼこ模様がついていたからです。
     クジラの脊椎板は,円盤形なので手や足で回転しやすく,また,でこぼこしているので回転させても上にのせた粘土がずれにくいのです。縄文時代の人々は,クジラの脊椎板の特徴を理解し,土器の製作台としてうまく利用していたようです。
     ところで,市来貝塚で出土した土器とは別の土器ですが,「()(だか)式土器」という土器にも,底に脊椎板特有のでこぼこ模様があります。この土器は北部九州から熊本にかけて広く分布しています。このことから,クジラの脊椎板は土器製作台という「商品」として広く流通していたのではないかと考えられます。市来貝塚のクジラの脊椎板も,「商品」として,この地にもたらされたものだったかもしれません。
     クジラの骨でつくられた土器製作台
     市来貝塚で出土した鯨の脊椎の跡が残る土器の底部(拓本)
    【参考】鹿児島考古 第25号 1991 市来貝塚特集 平成3年6月 鹿児島県考古学会
    ※市来貝塚は「先史・古代の鹿児島」の中で,詳しく解説されています。ここからご覧いただけます。
    ※市来貝塚の位置は,「遺跡分布地図検索」で探すことができます。ここからご覧いただけます。
    ※紹介した遺物は,縄文の森展示館常設展示室の「河口コレクションコーナー」でご覧いただけます。
  • 河口コレクション ~KAWAGUCHI Collection~
  •    河口コレクションとは,長年,鹿児島県の考古学界をリードしてきた考古学者,河口貞徳氏(1909~2010)が調査した遺跡の記録や,土器や石器などの考古資料のことです。
     河口氏は昭和20年代から約60年間にわたり,多くの遺跡を発掘し,遺物の時期や生活内容の解明を進めてきました。その資料は鹿児島県の歴史や文化を知る上で大変貴重なものとなりました。そしてこれらの貴重な資料は,ご遺族のご好意によりまとめて県立埋蔵文化財センターへ河口コレクションとして寄贈していただくこととなりました。
     ここに河口コレクションの一部を展示・公開し,河口氏がこれまで残されてきた多くの業績を偲びたいと思います。