写真の軽石製の遺物はいったい何に使われたものでしょうか?ランドルト環に似ているからといって,大昔のひとが視力検査に使ったわけではありませんよ。
この遺物は,「軽石製器台」と呼ばれ,鹿児島市郡元町の一の宮神社境内にある,一の宮遺跡で出土しました。一の宮遺跡は,昭和25(1950)年に,河口貞徳氏によって発掘調査が行われました。遺跡からは,約2,000年前の弥生時代中期のものと推測される竪穴住居跡が4基検出されました。これらの竪穴住居跡は,発掘調査により発見された県内初の弥生時代の住居跡であったことから,昭和28年に県指定史跡に指定されました。
さて,住居跡の中からは,この「軽石製器台」のほかに,磨製石鏃,石包丁,ノミ形石斧などの石器や甕・壺などの土器も出土しています。土器は,胴部に縄を絡めたような突帯が張りめぐらされており「一の宮式土器」と呼ばれています。底部には細い脚がつけられ,すぐ倒れてしまいそうです。そこで,右下の写真のように,「軽石製器台」の上に「一の宮式土器」を置いてみました。土器の胴部と中央部に向かって斜めに削られた軽石の穴とがぴったりと重なり,土器に安定感が加わります。まるで,座布団の上に鎮座しているようです。土器が倒れないようにするために,この軽石製の器台は作られたものであると考えられています。
※ ランドルト環:視力検査によく使われている、Cのカタチをしたマークの名前 |