【令和2年3月26日発表】
公益財団法人鹿児島県文化振興財団埋蔵文化財調査センターが発掘調査報告書作成を行った春日堀遺跡(志布志市)で発見された,飛鳥時代の集落跡について
【内容】
(1) 菱田川の右岸,標高約29mの河岸段丘上に位置する遺跡で,竪穴住居跡9軒,掘立柱建物跡7棟,地下式横穴墓1基,溝跡3条からなる飛鳥時代(7世紀中頃~後半)の集落跡が確認された。
(2) 集落跡は竪穴住居跡と掘立柱建物跡が大型の溝跡に囲まれている。
(3) 遺跡では瀬戸内地域で生産された須恵器(高坏)や宮崎平野で生産されたとみられる坏が出土し,広域的な交易活動がうかがわれる。また,溝跡から武器と考えられる鉄鏃が8本出土している点も注目される。
【評価】
(1) 南九州では初めて,飛鳥時代の溝に囲まれた集落跡の存在が明らかになった。居住域や墓域も確認されており,集落跡の様相が分かる重要な調査事例である。
(2) 大型の溝跡には防御的な性格がうかがわれ,鉄鏃の出土は,7世紀中頃~後半,大隅半島内部に生じていた社会的緊張を示すものとみられる。
(3)本遺跡は,文献に隼人が登場する時代の遺跡である。本県において,飛鳥時代の発掘調査事例は少なく,考古学から南九州の古代史を考える上でも重要である。
【春日堀遺跡の概要】
(1) 調査起因:東九州自動車道建設
(2) 調査期間:平成26~30年度
(3) 調査面積:20,600㎡
(4) 指 導 者:鹿児島大学 中村直子教授
(5) その他:発掘調査報告書は令和2年3月に刊行
【令和元年12月26日発表】
公益財団法人鹿児島県文化振興財団埋蔵文化財調査センターが平成29年度の発掘調査で発見した春日堀遺跡(志布志市有明町蓬原)の古墳時代の大型竪穴住居跡について
【内容】
(1) 遺跡は菱田川右岸の標高約29mの河岸段丘上に位置する弥生時代終末期~古墳時代前期(西暦250年頃)の集落遺跡である。
(2) 大型竪穴住居跡は,古墳時代の物で,直径10.4m,面積約76.2㎡の円形であり,一般的な竪穴住居跡の約4倍の大きさである。
(3) 大型竪穴住居では,住居廃絶時に建築材の焼却と祭祀に使用された遺物の廃棄が行われている。
【評価】
(1) 古墳時代としては南九州最大の竪穴住居跡が発見された。大型竪 穴住居跡は,通常の竪穴住居跡に比べ規模が大きく,多量の土器や 鉄器が出土している。集落内に階層差が存在した可能性があり,当 時の社会を知る上で重要である。
(2) 大型竪穴住居跡では,住居廃絶に関わる祭祀が行われたと考えられる。遺跡内において,同様の建物跡は7軒存在し,住居の廃絶行為を知る上で重要である。
(3) 住居廃絶の方法や土器の特徴は,宮崎平野及び都城盆地と強い関連性があり,古墳時代開始期に両地域と密接な交流が行われている。
【春日堀遺跡の概要】
(1) 調査起因:東九州自動車道建設
(2) 調査期間:平成26~30年度
(3) 調査面積:20,600㎡
(4) 指 導 者:鹿児島大学 中村直子教授
(5) その他:発掘調査報告書は令和2年3月に刊行予定