竪野冷水窯からは,抹茶を入れる器である「茶入」が大量に出土しました。その数はざっと見積もっても1万個は下らないでしょう。
接合作業を進めていくうちに,これらの「茶入」にはいろいろな形のものがあることがわかってきました。「茶入」の胴部が肩口からストンとまっすぐ落ちる筒形の肩衝形,全体の形が「茄子」の形に似ている茄子形,「林檎」の形に似ている文林形,「瓢箪」の形に似ている瓢箪形など,見ていても楽しいものがあります。なかでもとくに多いのが全体の約9割を占める肩衝形です。
肩衝形の茶入は,さらに細かく2つの種類に分けられます。冷水窯の茶入は,肩衝形の茶入の中でも,ロクロで作る小ぶりな「Ⅱ類茶入」になります。一方,粘土紐を積み上げてつくる大ぶりなものを「Ⅰ類茶入」といい,こちらのほうが「Ⅱ類茶入」よりも古い時代のものです。
実は,この「Ⅰ類茶入」が作られた背景には,薩摩藩の運命を左右するようなドラマがあって,その小さな体には大きな使命が課せられていたのです。
さて,その大きな使命とはいったい…(次回に続く)。 |