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カテゴリー: (公財)埋蔵文化財調査センター

なぜこんなところから!?~「縄文」の付いた弥生~古墳時代の土器片を,南九州ではじめて発見!~ (鹿屋市串良町 小牧(こまき)遺跡)

この3月に刊行された『小牧遺跡 3 弥生時代~古墳時代編』の土器の整理作業中の話です。内側に「縄文」を施す壺の口縁部(こうえんぶ)片が見つかりました。南九州では,縄目の文様が施される土器は縄文時代に限られています。さらに口縁部の内側に縄文が施される例はほとんどありません。まして,今回見つかった土器片はその形に縄文時代の特徴を感じられず,弥生~古墳時代の特徴がみられました。この土器片は,反()りながら大きくラッパ状に開く壺(つぼ)の口縁部(こうえんぶ)と考えられ,端部は平たく,豆粒(まめつぶ)のような貼()り付け文が1つ確認できました。上から見ると,縄文を転がして縁取(ふちど)られています。詳しく観察すると結節縄文(けっせつじょうもん:結び目のある縄目の文様)が施されていました。丁寧に拓本(たくほん:魚拓(ぎょたく)のように土器の文様や凹凸を墨で写し取ったもの)をとってみると縄目や結び目の様子が浮かびあがりました。

南九州の弥生時代~古墳時代の土器の外面は,指や板状の道具でなでるか,棒状の道具やつるつるした石などで表面を丁寧にみがいて仕上げることが多く,縄文で飾られる例は大変珍しいものです。この土器片が出土した周囲からは縄文時代・弥生時代・古墳時代の土器が入り混じって多量に出土していました。この土器片は果たしてどの時代のものなのか・・・整理作業の担当者は大変迷って,謎の遺物を集めた「?BOX(はてなぼっくす)」の中に収納しました。

 

昨年11月の小牧遺跡の土器の指導の様子をこのHPでお知らせしました。そのときに今回の土器片の形,文様(もんよう),明るい黄褐色(おうかっしょく)で小さな軽石が多く混じる特徴から,東海地方の東遠江(ひがしとおとうみ)から駿河(するが)地域の弥生時代後期~古墳時代前期(3~4世紀頃)の壺(つぼ)の可能性を教えていただきました。なかでも静岡県の駿河(するが)湾の東側のエリアの特徴がみられるとのことです。

この時期の土器は,駿河湾東部より西側からの出土事例が少なく,いちばん近い例としては,福岡市の博多(はかた)遺跡(203次調査)で,古墳時代前期の「大廓(おおぐるわ)式」と考えられる壺の口縁部や肩の部分の破片が報告されており,その肩部(けんぶ)の破片には小牧遺跡の例と同じように縄文が施されています。

小牧遺跡から出土した土器片は小さかったため,全体形がわからず,時期やエリアをさらに絞り込んで報告することができませんでしたが,この時代の東海地方の特徴をもつ土器が,本来の分布の範囲から大きく離れて発見されたことは,当時の交流等を考える上で貴重な資料となりそうです。南九州で初めての出土事例となります。

弥生時代~古墳時代の約900年間にわたり西日本の広い範囲で,南西諸島(なんせいしょとう)産の貝でつくられた製品が,沿岸部の遺跡,または弥生時代の墓,古墳などの墓の副葬品(ふくそうひん)として出土しています。それらの分布の状況から,南西諸島とこれらの地域を結ぶ交易ルートである「貝の道」が存在したことが考えられています(1996木下)。貝の種類や産地,主要な消費地や経路には,時代による変化がみられるとのことです。今回出土した土器片の由来となる可能性がある東海地方にも,南西諸島産の貝製品の出土事例があります。静岡県磐田(いわた)市の松林山古墳(しょうりんざんこふん)は,古墳時代前期に築造された大きな前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)で,南西諸島産のスイジガイ製の貝釧(かいくしろ:貝で作られた腕輪)の出土で知られています。

今の段階では,南九州地方と東海地方の交流の様子ははっきりしませんが,今回のような発見をとおして,当時の人々の動きが少しずつ解明されるかもしれません。

 

東海地方の弥生時代後期の土器(菊川(きくかわ)式)の形態

 

32の土器の口縁部の拡大

 

【図・写真】
静岡県菊川市白岩下遺跡出土土器                                                       
静岡県埋蔵文化財センター所蔵

 

 

 

東海地方の古墳時代前期の土器(大廓(おおぐるわ)式)の形態

 

【図・写真】

静岡県沼津市高尾山古墳出土土器                                                      沼津市教育委員会所蔵

 

 

 

【引用参考文献】

木下 尚子 1996『南島貝文化の研究-貝の道の考古学-』法政大学出版局

岩本 貴 1995「菊川式土器における編年上の問題」『財団法人静岡県埋蔵文化財調査研究所設立 10周年記念論文集』(財)静岡県埋蔵文化財調査研究所

岩本 貴 2010「雌鹿塚式の壺の形式変化について」『研究紀要 第16号』(財)静岡県埋蔵文化財調査研究所

岩本 貴 2012「浮文の法式 東遠江~駿河~伊豆北部の弥生後期~古墳前期の壺を中心に」『研究紀要 創刊号』静岡県埋蔵文化財センター

佐々木 憲一・久住 猛雄 2021「大分県武田市小園遺跡出土の布留系甕形土器-古墳時代前期後葉における地域間交流のアプローチ-」『九州考古学 第96号』

(財)静岡県埋蔵文化財調査研究所 2010『白岩遺跡・白岩下遺跡』静岡県埋蔵文化財調査研究所調査報告

第220集

沼津市教育委員会 2012『高尾山古墳発掘調査報告書』沼津市教育委員会 第104集

福岡市教育委員会2021『博多170-博多遺跡群 第203次調査』福岡市埋蔵文化財調査報告書 第1405集

 

 

 

6月の発掘調査

六反ヶ丸(ろくたんがまる)遺跡:出水市

粘土層によって,すぐ水が溜まってしまいます。排水作業に苦労しながら調査を進めています。

水没した調査区の様子
遺構かどうかの確認を行っています

 

萩ヶ峰(はぎがみね)A・B,白水(しろみず)B,山ノ上(やまのうえ)A遺跡:鹿屋市

過年度の調査で発見した竪穴建物跡の調査を引き続き行っています。

竪穴建物跡の断面清掃

 

新城跡:阿久根市

焼土が発見されました。炉の跡ではないかと考え,調査を進めています。

赤い土が焼土です

 

北山遺跡:阿久根市

中世(鎌倉時代頃)の竪穴建物跡です。床面で焼土とピットを検出しました。鉄製品や土師器なども出土しています。

竪穴建物跡

中世(鎌倉時代頃)の溝跡で、深いところは2m近くあります。土地を区画したり,敵の侵入を防いだりするための施設と考えられます。

溝状遺構

 

 

 

財団体験フェアin イオンタウン姶良が開催されました

6月12日(日)イオンタウン姶良でワークショップを行いました。今回のワークショップのメニューは,「土器ドキコースター」でした。縄文時代は,貝殻などを使って土器に文様をつけていましたが,今回は縄文人と同じように貝殻などを使ってコースターに文様をつけてもらいました。

 

 

いきなり文様をつけるのは難しいので,まずは,油粘土に文様をつける練習をしました。どんな道具を使えば,どんな文様がつくのか職員が紹介した後,実際に試してもらいました。

貝殻を使った刺突(しとつ)文

貝殻を刺すようににして文様をつけます。

木を使った押型(おしがた)文

様々な形を彫った木を押しながら回して文様をつけます。

これは山形の押型文です。

木を使った押型(おしがた)文 

これは楕円形の押型文です。

 

他にもいろんな道具を使うと,下のような文様がつきます。

 

油粘土で試したら,実際にコースターに文様をつけます。

 

実際に体験した皆様が作ったコースターです。

 

ワークショップの他に,鹿児島県文化振興財団の事業などを紹介するパネル展示もありました。

 

8月27日(土)28日(日)には宝山ホールで財団体験フェアが開催される予定なので,そちらにもぜひお越し下さい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

発掘調査が始まりました

令和4年度の発掘調査が始まりました。

今年度は六反ヶ丸(ろくたんがまる)遺跡(出水市),新城跡(しんじょうあと)(阿久根市),北山(きたやま)遺跡(阿久根市),萩ヶ峰(はぎがみね)A・B,白水(しろみず)B,山ノ上(やまのうえ)A遺跡(鹿屋市)で発掘調査を実施しています。

 

六反ヶ丸遺跡
層の堆積状況が複雑なため,先行トレンチを入れて地層の様子を調べています。
北山遺跡
溝状遺構(みぞじょういこう)【鎌倉時代頃】の調査中です。
新城跡
木や竹を伐採して調査区を整えています。
萩ヶ峰A・B,白水B,山ノ上A遺跡
包含層(ほうがんそう)を手作業で掘り下げていきます。

 

報告書作成・整理作業が始まりました

令和4年度の報告書作成・整理作業が始まりました。

今年度は,萩ヶ峰(はぎがみね)A遺跡(鹿屋市),平佐焼窯跡(ひらさやきかまあと)群(薩摩川内市)は整理作業を行います。

北山遺跡(阿久根市),川久保(かわくぼ)遺跡(鹿屋市),小牧(こまき)遺跡(鹿屋市),石鉢谷(いしばちだに)B遺跡(鹿屋市)は報告書を刊行する予定です。ご期待ください。

各遺跡で今年度の作業が始まりました。

分類作業:土器の接合をするために土器の特徴で分類していきます。

接合作業:土器片を接合していきます。

復元作業:土器片を組み合わせて,もとの形がわかるように復元していきます。

山あり 川あり ~遺跡の立地を見る~

昨年10月から始まった鹿屋市石鉢谷B遺跡と薩摩川内市平佐焼窯跡群の発掘作業は,1月末日をもって無事に終了しました。関係者のみなさまありがとうございました。

さて,遺跡の調査では,遺跡がどのような場所にあるか,航空写真を撮影し,周りの地形といっしょに調査区を撮影します。

鹿屋市石鉢谷B遺跡の北には高隈山が,薩摩川内市平佐焼窯跡群の西には川内川があり,なぜそこで人々の暮らしが営まれたのか,空を飛んでいる気分でご覧ください。

鹿屋市白水町石鉢谷B遺跡(写真中央が調査区)

薩摩川内市天辰町平佐焼窯跡群(写真中央が調査区)

「かごしまの遺跡26号」を発行しました!

(公財)鹿児島県文化振興財団埋蔵文化財調査センターの広報誌「かごしまの遺跡」第26号を1月31日に発行しました。

今回は平佐焼窯跡群(薩摩川内市)と薩摩焼について特集を組んでいます。

また, 今年度発掘調査を行った北山遺跡(阿久根市)、石鉢谷B遺跡(鹿屋市)の成果や発掘調査、整理作業の体験などについても掲載していますので、ぜひご覧ください!

かごしまの遺跡第26号(PDF)