鹿児島県上野原縄文の森 (公財) 鹿児島県文化振興財団上野原縄文の森 埋蔵文化財情報データベース 鹿児島県立埋蔵文化財センター (公財) 鹿児島県文化振興財団埋蔵文化財調査センター
MENU

鹿児島県上野原縄文の森

鹿児島県上野原縄文の森 HOME 公財 鹿児島県文化振興財団鹿児島県上野原縄文の森 埋蔵文化財情報データベース 鹿児島県立埋蔵文化財センター 公財 鹿児島県文化振興財団埋蔵文化財調査センター

上野原遺跡の主な出土品

上野原遺跡の出土品

上野原遺跡(第10地点)では,縄文時代早期後葉と同時期の他の遺跡と比較すると,多量で,しかも多種・多様な土器・土製品や石器・石製品等の遺物が約15万点以上も出土しました。

これらの遺物から,上野原遺跡の縄文人は,森と共存しながら豊かな文化を営むなかで,用途に応じて土器や石器を作り分け,多彩な土製品や石製品を使って祭りや儀式を行い,おしゃれに気を配るなど,精神的にも豊かな生活を営んでいたものと考えられています。

【写真撮影協力:牛嶋 茂(国立奈良文化財研究所】

土器

出土した多種・多様な土器

第10地点で縄文早期後葉(約8,600年前)の人々は,深鉢形土器,鉢形土器,壷形土器,小形土器など,多様な土器を使っていました。

一般的には深鉢形土器を煮炊きに使っていたと考えられています。ところが,第10地点では,他に類を見ないほど形や大きさの多種・多様な土器が出土しました。
この頃の人々が使っていた土器には「S字文」や「渦巻文」などの華麗な模様が描かれています。また,南九州の土器では珍しい「縄文」がつけられているのも特徴です。

深鉢形土器

深鉢形土器

深鉢形土器は,口や胴の部分にススが付着していることから,煮炊きに使用されたものと考えられています。中には,口の部分の直径が54cm,高さが54cmと大人がやっと持てる大型のものから,片手でも持てるほどの小型のものまで,様々な土器があり,用途によってこれらを使い分けていたと考えられています。また,表面に施された華麗な文様も特徴的です。

壺形土器

壺型土器

弥生時代に使われた壷形土器に似た形の土器が,弥生時代より6,000年前の縄文時代早期後葉の時期に使用されていたことが確認されました。国内最古の壷形土器の一つです。

鉢形土器

鉢形土器

高さに比較して口径が大きい土器を鉢形土器と呼んでいます。この土器は,口の部分と胴の部分の中ほどに穴のあいた把手が付けられていることから,つり下げて使用していたとも考えられています。

土製品

土製品のいろいろ

土製品は,耳飾り,土偶,棒状土製品,土製円盤,異形土製品に分けられます。
これらの出土品のうち,装身具である耳飾りは,縄文時代中期(約5,400年前)以降,特に東日本で発達しました。また,土偶は縄文時代早期の時期に九州地方では使われておらず,後に東日本から伝えられたと考えられていました。
ところが,上野原遺跡からは,縄文時代早期後葉(約8,600年前)の耳飾りや土偶が出土したことで,これまでの定説が見直されることになりました。また,棒状土製品や異形土製品,土製円盤など,非日常的な土製品が多数出土していることで,豊かな精神世界を共有していたことも立証されました。

耳飾り

耳飾り

ピアスのように耳たぶに穴をあけて付ける耳飾りです。土製と石製があり,合計28点出土しました。土製の耳飾りには,土器と同じ「幾何学文様」や「渦巻き文様」,「S字文様」などの文様を付けたり,赤いベンガラで彩色したものもあり,縄文人のおしゃれ感覚や精神世界をうかがうことができます。

土偶

土偶は,病気やけがの身代わり,子孫の繁栄や豊かな自然の恵みへの願いや感謝をこめてつくられたと考えられています。出土した土偶は,頭と両腕を三角の突起で表現し,胸には小突起で乳房を表し,横位の細い線で肋骨を表現した女性像で,九州最古の土偶です。

石器

出土した石器

出土した石器は,獲物を捕る道具である石鏃・石槍や,加工する道具である磨製石斧・掻器・削器・彫器・石錐・楔形石器など,多種・多様です。

多種・多様な石器を製作して,用途による使い分けをするなど,高度な技術をもち,豊かな生活を営んでいたことがわかります。

石斧・環状石斧・環石

石斧

○石斧(せきふ)
石斧には,表面を磨いた斧(磨製石斧)や打ち欠いただけの斧(打製石斧)があり,上野原遺跡からは両石斧とも出土しています。石斧は,全長20cm,重さ1kg,刃の長さ9cmの大型品から,全長5cm,重さ10g,刃の長さ2cmの小型品まであり,大木の伐採用の斧から加工具の鑿(のみ)まで幅広く用途に応じた種類の石斧を使用していたものと思われます。

○環状石斧(かんじょうせきふ)
ドーナツ形で,外側の縁は鋭い刃がつけられており,全部で5点出土しました。いずれも割れたり,表面は焼けてくすんでいたりしていますが,用途は不明です。

○環石(かんせき)
環状石斧と同じようにドーナツ形ですが,環状石斧と違い外側に刃が付いておらず,用途も不明です。1点出土しました。

石鏃・石槍

石鏃・石槍

○石鏃(せきぞく)
縄文時代に発達した石の矢じりです。主に狩猟の道具である弓矢の先につけて使いました。大きさや形がいろいろあるところから,鹿は大形の石鏃,鳥は小形の石鏃等,対象とする獲物によって矢じりを使い分けていたと考えられます。

○石槍(いしやり)
長い柄をつけ,槍として,主に狩猟の道具に使われました。石槍は,木の葉状の細長い形をした石器で,旧石器時代から縄文時代の早い時代にかけて使用されていました。上野原遺跡のこの時期まで使われていた例は少ないようです。

石皿(いしざら)・磨石(すりいし)・敲石(たたきいし)

石皿・磨石・敲石

石皿や磨石,敲石は,縄文時代の主な食料であるドングリなどの木の実を石で割り,石皿の上で磨石を使い擦りつぶして粉にする製粉の道具です。石皿は長年使い続けてくぼみ,磨石は手になじむ大きさで,表面は滑らかになっています。また,敲石は物を割るため,あるいは石器を作るときのハンマーとして使用したために,石の端の部分は欠けたりして凹凸になっているのが特徴です。

石 匙(いしさじ)

石匙

石匙は,石鏃や石斧とともに,縄文時代の特徴的な石器の一つです。ものを切ったり,皮をはいだりするときに用いられた道具で,縦長のものと横長のものがあり,一方につまみをつけるのがこの石器の特徴です。上野原遺跡ではていねいに作った台形のものが数多く出土しています。

異形石器(いけいせっき)

異形石器

石鏃,石斧などの実用的な石器は用途に応じてそれぞれ一定の形に作られていますが,これらとは異なった形をしていることから,総称して異形石器と呼ばれています。形も様々で,あるものは人形,あるものは動物に似ており,何に使われたかははっきりしません。祭りの儀式用とも考えられています。不思議な石器です。

石製品

石で作られた実用的な道具を「石器」と呼ぶのに対して,非実用品を「石製品」と呼んでいます。上野原遺跡の石製品には,垂飾,耳飾り,軽石製品があり,いずれも装飾品と考えられています。しかし,現代のアクセサリーとはやや異なり,魔除けや祓いの役割が大きかったものと考えられることから,縄文人の精神文化を理解する手だてとなるものです。

石製垂飾・石製耳飾り

石製品

○石製垂飾(せきせいすいしょく)
ごく普通の石に穴をあけて,ペンダント風に仕上げてあります。穴のあけ方や用途については謎ですが,特別な意味のある製品であることだけは間違いないようです。

○石製耳飾り(せきせいみみかざり)
軽石や凝灰岩を削ったり,こすったりして土製耳飾りと同じ様な形に仕上げた石製耳飾りで,中には赤色顔料で彩色したものもありました。祭り事などで使用されていたのではないでしょうか。