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縄文の食生活

環境の変化

旧石器時代の終わりから縄文時代の初めころになると,氷河期から温暖な気候へと変わっていきました。暖かくなり雨が多くなった大地では,落葉広葉樹の森が生まれ木の実を実らせるようになりました。

旧石器時代の人々は,ナウマン象やヘラジカなどの大型動物を獲って食べていましたが,彼らは徐々に滅んでいきました。滅んだ理由としては,人間に乱獲されたり,落葉広葉樹の森には大型動物の食べ物が少なかったり,大きな動物は森に住むのに適していないことなどが考えられます。

そして落葉広葉樹の森には,木の実を主食とする小型で敏捷な動物が姿を見せるようになりました。豊かな森の恵みは人間だけのものではなく,イノシシやシカなどの小型動物にとっても同じだからです。大型動物の捕獲に依存していた人々も,方向転換を余儀なくされました。

狩猟道具も,素早く逃げる小型動物を捕らえるために,それまでの槍主体の狩りから,弓矢などに変わりました。また,小さな動物は捕まえても食べられる量が少ないので,動物以外の食べ物が多く必要とされるようになりました。
氷河期が終わって水位が上昇したので,かつて草原だった土地は浅い海になり,魚や貝なども取れるようになりましたが,それだけでは足りません。

そこで,豊かな森から木の実や草の新芽や根っこなどを拾って食べることになったのです。ところが木の実の多くはそのままではおいしく食べられないので,熱湯で煮てアク抜きをして食べることになりました。

土器の発明

土器はアク抜きを要する木の実を煮たり,保存するために発明されました。焚き火の跡からカチカチに変形した粘土を偶然に見つけたことが,その始まりかも知れません。

人々は,大型動物を狩猟して生きていた時代に比べると,森から植物質の食料を多く利用することで,安定して豊かな自然環境の中で暮らし始めました。

栫ノ原遺跡で見つかった石皿・磨石(出展:加世田市教育委員会)

この時期,発達したのは土器だけではありません。旧石器時代には,狩りをしたり,捕まえた動物を調理するのに適した石器が多く作られましたが,この縄文時代には,植物を採取するための打製石斧(だせいせきふ)や植物を加工するための石皿(いしざら)・磨石(すりいし)・敲石(たたきいし)などの生産用具が多く作られるようになりました。

食物の調理法

ドングリやトチの実などは,土器の中で熱湯で煮てアク抜きをして食べました。
長野県などの遺跡では,炭化したパン状やクッキー状のものが出土しており,これらの成分を分析した結果,木の実・動物の肉・鳥の卵などを混ぜて作っていたことがわかっています。
縄文時代の遺跡では,大小多くの石が意図的に集められた「集石」という遺構が数多く発見されています。集められた石に焼けた痕があることや炭が発見されることから,石を焼いて蒸し焼きをした施設ではないかと考えられています。

【栫ノ原遺跡で見つかった連穴土抗(出展:加世田市教育委員会)

また縄文時代早期を中心に,大小二つの穴がトンネルで繋がった「連穴土坑」という遺構が見つかっています。トンネルの下の土が赤く焼けている場合があることから,火を使用したことが考えられます。この施設は燻製を作るためのものであったとする説もあります。

貝塚から発見される食べ物

貝塚は「縄文人のゴミ捨て場」とも呼ばれます。貝塚には貝殻や動物の骨が腐らずに残っているので,貝塚を調べれば縄文人が食べた動物の種類がわかるのです。

黒川洞穴出土の自然遺物
ホニュウ類 イノシシ,シカ,カモシカ,ツキノワグマ,オオカミ,イヌ, タヌキ, アナグマ,テン,イタチ,ノウサギ,ムササビ,モグラ
鳥類 キジ,ガン,カモ,ハト,ワシタカ目
ハチュウ類 カメ類,ヒキガエエル
魚類 マダイ,クロダイ,フナ
貝類 ハマグリ,アコヤガイ,マルサルボウ,オキアサリ, コベソマイマイ,マツカサガイ,タマガイ,タカチホマイマイ, イタヤガイ,ツメタガイ,マクラガイ,イシマキ,オキシジミ,カガミガイ,ヘナタリ,カワニナ
その他 モクズガニ

※上の表中で,オオカミ・ツキノワグマ・カモシカなどは,現在の鹿児島県では見られない動物です。

(オオカミは日本では絶滅しています) 【写真 市来貝塚の貝層】

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