令和4年7月9日(土)に,「かごしま遺跡フォーラム2022~中津野遺跡と掘り出された南さつまの歴史と文化~」を,南さつま市の金峰文化センターで開催しました。
第9回目となる今回のフォーラムは,令和3年3月に開通した国道270号宮崎バイパス工事に伴って,平成18年度から平成29年度まで発掘調査を行った「中津野遺跡」とその周辺をテーマに,国内最古級の弥生時代前期後半(約2,500年前)の船の一部(舷側板)など,地域で掘り出された遺跡・遺物から南さつまの歴史的特性を紹介しました。
当日は,前鹿児島県考古学会会長の本田道輝氏による講演,南さつま市教育委員会の新屋敷久美子氏・橋口亘氏,当センター職員の鮫島えりな文化財研究員が発表を行いました。
本田道輝氏の講演では,中津野遺跡周辺が県内でも有数の遺跡の密集地であることが説明され,縄文時代・弥生時代の代表的な遺跡が紹介されました。
新屋敷氏の発表では,古墳時代から古代の遺跡の紹介があり,「阿多」と刻書された土器が見つかっていることなどが報告されました。
橋口氏の発表では,南さつま市の万之瀬川流域において,中世から近世の海外産の希少な遺物が多数発見されており,対外交流の歴史について報告がありました。
鮫島文化財研究員の発表では,中津野遺跡の調査の経過や主な成果,そして今回重要な発見となった弥生時代の船の部材の発見の様子とその特徴について報告がありました。
その後のパネルディスカッションでは,当センター寺原徹調査課長が司会を務め,南さつま市の遺跡や歴史について意見交換が行われました。また,会場からも質問があり,発表者たちが真摯に答えていました。
今回のフォーラムを通して,南さつま市には多くの遺跡があり,歴史・文化面でも重要な発見が多くあったことを紹介できました。
今後も,郷土の文化財についての普及啓発を続け,地域の歴史を紐解く一助となればと思います。
※ 中津野遺跡の出土遺物や船の部材は,南さつま市の「歴史交流館金峰」で展示中です。ぜひ,現地でご覧ください。
※ 当日の講演・発表の様子は,鹿児島県立埋蔵文化財センターのYouTubeチャンネルで公開予定です。準備ができましたら改め紹介いたします。