久保田牧遺跡(鹿屋市)~令和4年度刊行報告書から~
久保田牧(くぼたまき)遺跡(鹿屋市吾平(あいら)町)は,縄文時代早期から中世にかけての複合遺跡です。主要地方道鹿屋吾平佐多線(吾平道路)改築事業に伴って,令和元年6月から令和4年1月まで発掘調査を実施しました。令和4年度に刊行した報告書『久保田牧遺跡1 古代以降編』では,古代・中世・近世の調査成果を紹介しています。
古代では,掘立柱建物跡・土坑・畝間状遺構・柱穴跡などの遺構が検出されました。遺物は,土師器・黒色土器・須恵器・刻書土器・墨書土器・土錘・石製品などが出土しました。中でも,多くの墨書土器が出土したことが特徴的です。
中世では,掘立柱建物跡・土坑・溝状遺構・古道などの遺構が検出されました。遺物は,土師器・須恵器・瓦質土器・青磁・白磁・染付・陶器・滑石製石鍋・古銭・鉄製品などが出土しました。
これらの遺構・遺物は,当時の大隅半島の様子を知る上で貴重な資料です。
以下のページから発掘調査報告書『久保田牧遺跡1 古代以降編』(PDF)をダウンロードできます。詳しくは,そちらをご覧ください。
「発掘調査報告書一覧」
https://www.jomon-no-mori.jp/bunkazai-center/list
また,主要地方道鹿屋吾平佐多線(吾平道路)改築事業に伴って,周辺の「立塚(たちづか)遺跡」・「名主原(みょうずばる)遺跡」の発掘調査も実施しております。その調査成果は改めてご紹介します。
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令和5年度河口コレクション展示~奄美諸島の遺跡から~
令和5年9月9日から,上野原縄文の森展示館の「河口コレクション」コーナーを「奄美諸島の遺跡」に入れ替え,展示しています。
奄美諸島における河口貞徳氏の遺跡調査は,1954(昭和29)年の「宇宿(うしゅく)貝塚(奄美市)」に始まり,1984(昭和59)年の「中甫(なかふ)洞穴」まで続きました。
今回紹介するのは,それらの遺跡から「中甫(なかふ)洞穴(知名町)」,「住吉(すみよし)貝塚(知名町)」,「喜念(きねん)貝塚(伊仙町)」,「面縄(おもなわ)貝塚(伊仙町)」,「嘉徳(かとく)遺跡(瀬戸内町)」です。それぞれの遺跡の特徴や代表的な遺物を展示,紹介しています。
これらの貴重な成果を,上野原縄文の森展示館にてご覧ください。
展示期間 令和5年9月9日(土)~令和6年1月8日(金)
河口コレクションについてはこちらもご覧ください。
河口コレクション – 鹿児島県立埋蔵文化財センター (jomon-no-mori.jp)
今回紹介した遺跡は,以下の報告書に掲載されています。
『鹿児島県立埋蔵文化財センター発掘調査報告書』(200)「吐噶喇・奄美の遺跡」(PDF)
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鹿児島城二之丸跡の調査
埋蔵文化財センターでは,現在,鹿児島城二之丸跡の発掘調査を行っています。鹿児島城の二之丸は,本丸(現在の黎明館)の南側にありました。鹿児島県立図書館もその範囲内に建っています。
8月から調査を行っており,瓦や陶磁器などの遺物が出土しました。また,土塁状の遺構や石を列状に並べた遺構が見つかっています。今後,古い絵図と比較するなどしながら,これら遺構の時期や用途を明らかにできればと思います。
調査は10月末まで続きます。今後の調査成果にご期待ください。
下記リンクから土塁状の遺構と石列の3Dを閲覧することができます。(外部サイトへ移動します)
土塁状遺構
https://skfb.ly/oKUCT
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令和4年度刊行報告書から~「鹿児島城跡(犬追物馬場・火除地)」(鹿児島市山下町)
鹿児島城跡(犬追物馬場(いぬおうものばば)・火除地(ひよけち))は,鹿児島城御楼門(ごろうもん)正面に位置する,中世から近代にかけての複合遺跡です。国の鹿児島第3合同庁舎整備事業に伴って発掘調査を行いました。
遺跡からは,近世の瓦類,中国産陶磁器,国産の肥前系陶磁器や薩摩焼,木製品(杭・下駄類)などが見つかっています。さらに,名前のとおり,犬追物馬場の柵として使われていたと思われる木製の杭が見つかっています。
また,近世の造成層が確認され,これより下層には,元禄の大火の処理層や鹿児島城築城以前の中世層などが良好な状態で残存していることが明らかになりました。
今回の調査により,鹿児島城内の変遷や土地利用等を考える上で重要な成果を得ることができました。
詳しくは,下記ページより「鹿児島城跡(犬追物馬場・火除地)2」の報告書(PDF)をごダウンロードしてご覧ください。
今回の発掘調査で見つかった遺物等は,『上野原縄文の森 第67回企画展「新発見!かごしまの遺跡2023 ~発掘調査速報展~」』(2023年10月1日まで)にて,展示しておりますので,上野原縄文の森へお越しください。
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大学生インターンシップ
埋蔵文化財センターでは,小・中学生 ・高校生の職場体験学習のほか 大学生のインターンシップや博物館実習等を受け入れています。
今回,大学生のインターンシップの申し込みがあり,9月4日から8日までの5日間,当センターの業務を体験してもらいました。整理作業の土器の接合や注記なども体験してもらいました。
「接合は大変でした。こうした地道な作業によって報告書ができていることがわかりました」(本人の感想より)
このインターンシップ体験が今後の進路選択に役立つことを期待しています。
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夏休みの教職員研修講座
埋蔵文化財センターでは,夏休み期間中に県総合教育センターや上野原縄文の森と連携して,学校の先生方を対象とした以下の研修講座を実施しています。
・ パワーアップ研修(10年目研修)
・ フレッシュ研修(初任者研修)
・ 先生のための考古学講座
・ 地域体験研修
今年も夏休み期間中,約50人の先生方が受講しました。受講された先生方から「埋蔵文化財センターの業務や県内の遺跡について知ることができてよかった」,「研修で学んだことを授業で活かしたい」などの感想もいただきました。
今年の研修は終わりましたが,来年も研修講座を実施します。興味を持たれた教職員の方は,ぜひ来年,ご参加ください。お待ちしております。
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会計年度任用職員(文化財発掘調査補助員)の募集について(さつま町虎居城跡発掘調査)
鹿児島県立埋蔵文化財センターでは,会計年度任用職員(文化財発掘調査補助員)を募集します。
詳しくは,下記募集要項(PDF)をダウンロードしてご確認ください。
職務内容
埋蔵文化財の発掘に関わる業務
掘削,排土処理,運搬等
募集人員
20人
募集対象
以下の条件を満たしている方
1 指定された日及び時間に勤務できること
2 協調性があり,埋蔵文化財の発掘調査作業補助の職務に耐えうる者
なお,以下に該当する方は,応募できませんので御了承ください。
1 禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
2 鹿児島県職員として懲戒免職の処分を受け,当該処分の日から2年を経過しない者
3 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し,又はこれに加入した者
勤務時間
1 勤務日数
原則として月14日以内
2 勤務日
月曜日から金曜日までに勤務日を割り振ります。
※土曜日,日曜日及び祝日には勤務日を割り振りません。
3 勤務時間
午前9時00分から午後4時30分まで(正午から午後1時まで休憩時間,勤務時間6時間30分)
※ 所定勤務時間を超える勤務 原則として無
4 休暇
年次有給休暇
特別休暇(有給・無給)
勤務地
(勤務地)虎居城跡 鹿児島県薩摩郡さつま町宮之城屋地
(本 部)鹿児島県立埋蔵文化財センター 鹿児島県霧島市国分上野原縄文の森2番1号
任用期間
令和5年11月1日(水)から令和6年1月26日(金)まで
報酬支払日
原則として毎月12日(毎月末日締切翌月支払)の予定
報酬等
1 基本となる報酬
日額:5,600~6,000円
※学歴・発掘作業経験によって変動有り。
※欠勤の場合,減額有り。
2 期末手当
なし
3 通勤にかかる費用弁償
一定の要件を満たす場合に支給されます。
退職金制度
無
加入保険等
雇用保険・災害補償制度の適用あり。
住宅
無
募集期間
令和5年9月1日(金)~令和5年9月15日(金)
埋蔵文化財専門職員養成講座(基礎講座・技術研修講座)
【埋蔵文化財専門職員養成講座(基礎講座・技術研修講座)】
当埋蔵文化財センターでは,県内市町村の埋蔵文化財担当者向けに,発掘調査・整理作業に必要な知識習得や技術の向上を目的とした,専門職員養成講座を開催しています。今回は7月20日と21日の二日間にわたり基礎講座と技術研修(調査技術)講座を実施しました。
基礎講座は,7月20日に鹿屋市名主原(みょうずばる)遺跡と東串良町郷土研修館で行いました。午前中は名主原遺跡発掘調査の現場を見学するとともに,発掘調査に至るまでの経緯や調査に必要な物品などついて研修を行いました。午後からは会場を移して,東串良町の取組について説明を聞き,文化財行政の実態を学ぶことができました。



7月21日は,名主原遺跡で遺跡の地層(土層)についての技術研修を行いました。
発掘調査では,遺跡がいつの時期にどんな人々がどんな生活をしていたかを調査しますが,その「いつの時期に」を知る手掛かりが土層です。
火山の多い鹿児島県では,火山噴火によって降り積もった噴出物の年代が分かっています。その火山灰層を鍵層として,時代を特定します。まず初めに,代表的な火山灰層の年代や特徴を紹介しました。
次に,発掘現場の実際の土層を見ながら,分層・作図に取り掛かりました。
土層は堆積した年代によって,含まれる物質(火山灰や土,砂,石など)が異なっていて,色や硬さなどの違いが生じます。それらをよく観察し,土層の境目に線を引きます。この作業を「分層」といいます。その後,分層した土層を用紙に作図していきました。




夏の現場の暑さや,途中降り出した雨にも負けず,参加されたみなさんは最後まで取り組むことができました。
今回の研修で学んだことを基に,各市町村でも発掘調査や整理作業が順調に進められることを期待しています。
「ようじょう」は「洋上」ではなく・・・
遺跡の発掘調査で「ようじょう」という単語を耳にすることがあります。
漢字では「洋上」ではなく,「養生」と書きます。
遺跡の発掘調査は,ほとんどが長期に渡ります。調査期間中にみつかった遺構や遺物の乾燥を防いだり,降雨で流されないようにするためにブルーシートやコンパネを使って覆い,保護したりします。それを「養生」といいます。
特に夏の時期は,暑さによる地面の乾燥やひび割れ,台風等の大雨による水害が多くなります。このためほぼ毎日,1日の作業の終わりには「養生」をして終了します。
発掘作業には,このような細かな対策も必要です。見つかった遺構や遺物を大切に守っているのです。
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ワクワク考古楽出前授業in鹿児島盲学校
7月11日,鹿児島県立鹿児島盲学校でワクワク考古楽を実施しました。今回は,「発掘調査の方法や西南戦争の遺跡の発掘調査成果を知ろう」という学習課題をもとに,授業を行いました。
はじめに,埋蔵文化財センターの業務について紹介しました。発掘調査の方法を紹介するとともに,その成果が世界遺産や国の史跡の指定に役立っていることを説明しました。
次に,西南戦争時の西郷軍と政府軍の進路と,関連する「滝ノ上火薬製造所跡」,「高熊山激戦地跡」,「チシャヶ迫堡累群跡」,「岩川官軍墓地」の発掘調査の調査成果を紹介しました。
最後に,発掘調査で見つかった遺物に触れる活動を行いました。西南戦争で使われた本物の銃弾のほか土器・石器にふれ,手触りや重さを体感しました。
生徒たちは今回の授業を通して,地域の歴史や先人たちの活躍を理解することができたと思います。これからも,いろいろな活動を通して地域のことを学んでもらいたいと思いました。
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