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考古ガイダンス第20回

  • 縄文の風 かごしま考古ガイダンス
    第20回 九州縦貫自動車道関連の遺跡
  • 九州縦貫自動車道関連の遺跡分布図遺跡が道路工事などによって壊されてしまう場合,事前に発掘調査を行います。

    左図は,鹿児島県内中央部の発掘された主な遺跡を示す地図です。これを見て何か気づきませんか。遺跡の分布が一本の線のように見えるでしょう。
  • 【九州縦貫自動車道関連の遺跡分布図:1 加栗山遺跡, 2 小瀬戸遺跡, 3 加治屋園遺跡】
  • これは九州縦貫自動車道・南九州西回り自動車道(鹿児島~市来間開通)・東九州自動車道(加治木~末吉財部間開通)の3つの高速道路の建設工事前に発掘調査をした跡なのです。
  • ■鹿児島県における発掘史の転換点■
  • 九州縦貫自動車道の建設に伴い,昭和46年から昭和55年までの9年間に38ヵ所の遺跡が発掘調査されました。総面積はおよそ186,000平方メートルに上ります。このときの調査面積や出土した遺物の量は鹿児島県の発掘史上類をみないもので,数々の貴重な発見がなされました。鹿児島県に本格的な発掘調査の波が到来したのです。
  • ■主な遺跡の紹介■
  • 加栗山遺跡と加治屋園遺跡加栗山遺跡(かくりやまいせき)

    鹿児島市川上町。旧石器時代・縄文時代・中世山城跡の複合遺跡。縄文時代早期(約9,500年前)の竪穴住居跡が17軒,薫製(くんせい)づくりを行っていたと考えられる連穴土坑(れんけつどこう)と呼ばれる施設が33基発見されました。
    縄文時代早期のはじめ(約9,500年前)は,定住生活が始まるかどうかというころであり,一つの遺跡から竪穴住居跡が17軒見つかったことは全国でもまれなことでした。
    また旧石器時代の道具である細石器(さいせっき)や,石皿(いしざら)も発見されました。
  • 【写真 上空から見た加栗山遺跡(黄色)と加治屋園遺跡(青色)】
  • 加治屋園遺跡加治屋園遺跡(かじやぞのいせき)

    鹿児島市川上町。旧石器時代と縄文時代の複合遺跡。加栗山遺跡とは小川を隔てた台地にあり,鹿児島料金徴収所南側の台地縁辺部にあたります。約15,000年前の旧石器時代の層からは,加治屋園技法と名付けられた独特の技法を用いて製作された細石器や,短い粘土紐(ねんどひも)を貼り付けた土器のほか,石鏃(せきぞく)や石皿などが発見されました。

    【写真 上空から見た加治屋園遺跡】
  • 土器が発明される前の時代のことを旧石器時代といいます。加治屋園遺跡では,旧石器時代の代表的な道具である細石器と,縄文時代に作られた土器や石鏃・石皿などが同時に発見されました。

    この他にも鹿児島では,旧石器時代の終わりから縄文時代の始めにかけて,多くの遺跡が発見されています。これは日本列島の中でも南に位置し,いち早く気候の温暖化が進んだことが要因の一つといわれています。暖かい気候の中でドングリなどの木の実に恵まれ,それを求めて動物も多く住むようになったのでしょう。このように,生活に欠かせない食料が豊かになり,初めて定住生活が始まるようになったと考えられています。
  • 小瀬戸遺跡小瀬戸遺跡(こせどいせき)

    姶良郡姶良町。桜島サービスエリア近くの沖積低地に所在。奈良時代末から平安時代にかけて使われた土師器(はじき)・須恵器(すえき)・青磁(せいじ)・白磁(はくじ)・瓦(かわら)などが多量に出土しました。遺構としては数多くの柱穴群をはじめ,掘立柱建物跡2棟,井戸跡2か所,溝状遺構10条などが発見されました。
  • 【写真 上空から見た小瀬戸遺跡】
  • 井戸跡からは木製の容器,瓦,植物の種子(モモ・ウメ・ヒョウタン等)が出土しました。通常木製品や種などは腐敗しますが,この遺跡は低湿地であるため,地下水に保護されて残っていたのです。当時の植物や木製品を知る上で貴重な資料です。また底面に「伴家」とヘラで書かれた緑釉陶器(りょくゆうとうき)や墨書土器(ぼくしょどき)なども出土しました。
  • 当時これらの陶器や文字が使用されたのは役所や寺院などごく限られた場所であったことや,大隅国分寺跡と類似した瓦が見つかっていることから,郡衙(ぐんが)などの公的な施設があったのではないかと考えられています。 
    九州縦貫自動車道関連で発掘されたその他の主要な遺跡として,三代寺遺跡(加治木町)・石峰遺跡(溝辺町)・木場遺跡(栗野町)・桑ノ丸遺跡(溝辺町)などがあります。
  • 用語解説
  • 石皿 木の実などをすりつぶすのに使用した皿状の石器。
    石鏃 石のやじり。矢の先につけて,狩猟具・武器として使用した。
    黒曜石 灰色ないし黒色のガラス質の石。硬くて加工がしやすいという性質 から石器の素材となる。
    青磁 青緑色または淡黄色の釉薬(うわぐすり)をかけた磁器。
    白磁 白色の磁器。
    磁器 素地(そじ)がよく焼きしまってガラス化し,吸水性のない純白透明性 の焼物。有田焼・九谷焼など。
    土師器 古墳時代から平安時代まで使用された赤茶褐色の土器。弥生時代の技法を受け継いでいる。
    須恵器 古墳時代から平安時代まで使用された灰色の焼物。朝鮮半島から伝わった技法で作られ,土師器よりも硬い。
    郡衙 郡司が政務をつかさどる役所。奈良・平安時代,全国に国と郡と里が設置された。
    墨書土器 墨で文字や絵画などを書いた土器。
  • (文責)橋口 勝嗣