企画展内覧会
10月19日,『上野原縄文の森第68回企画展「人のあゆみとジオストーリー~南九州の火山と生きた人びと~」』の内覧会を行いました。
今回の企画展は,火山や地形などの地質遺産と,発掘された遺構・遺物という歴史遺産との関わりから,火山や地震,災害等と共存してきた歴史について紹介します。
内覧会での意見をもとに,その展示準備を着々と進めております。
ぜひご覧ください。
【展示期間】
令和5年10月21日(土)~令和6年1月8日(月・祝)

土器をよみがえらせる「復元」~整理作業から~
発掘調査で見つかった土器は,ほとんどが破片でバラバラの状態で見つかります。使っていた土器が割れてしまったから捨てたり,地中に埋まっている間に土の重みで割れてしまったりするからです。
そんなバラバラの状態で見つかった土器の破片から,同じ個体の破片を探してくっつける作業を「接合」といいます。今回はその次の作業,「復元」について紹介します。「復元」は文字どおり割れた土器をもとの形に直す作業です。埋蔵文化財センターでは現在,2人の整理作業員さんがこの作業に当たっています。
土器の形を「復元」するために,破片の一つ一つをていねいに専用の接着剤で付けていきます。このとき,土器の底部または上部からつなげていきますが,隣り合う土器の面と面をしっかり合わせることが重要です。そうしないと,形に歪みが出て,最後でうまくつながらないことがあるからです。
土器は時代ごとに形や文様・飾りが異なります。また,ひとつひとつが昔の人の手作りであり,個体によって器形が微妙に違います。その細かな差を考慮して復元していきます。
土器片が見つからなかった部分は石こうなどで埋めます。このときも,もともとの土器の厚さや傾きに合わせて埋めていきます。継ぎ足したり削ったり,細かな調整を繰り返していきます。また,写真撮影にあわせて,色合いを整えるため石こう部分に色を塗ることもあります。
このように,復元作業は様々な配慮が必要になりますが,熟練の作業員さんの手によって,その姿が現代によみがえるのです。
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吾平小学校の遺跡見学
10月3日,鹿屋市立吾平小学校6年生の児童32人と引率の先生方が,授業の一環として名主原遺跡(鹿屋市吾平町)見学に訪れました。
まず初めに,調査担当の職員が遺跡の概要について説明しました。児童たちは社会科(歴史)の授業で習ったことを思い出しながら聞いていた様子でした。
その後,2グループに分かれて,遺跡見学と発掘体験を交互に行いました。
遺跡見学では,まず,地層の学習を行いました。代表的な火山灰層について,それが何年前に降り積もったのか,何時代に当たるのかを説明を聞きました。児童も理科の学習で地層の成り立ちについて学んでいたので,興味深く聞いていました。
次に,建物跡について学習しました。名主原遺跡では,古墳時代の竪穴建物跡が多数見つかっています。完全な形に近い,大きな土器が残っている建物跡もあり,当時の生活を感じることができたようです。また,その建物跡を掘る作業員さんの細やかな作業も直接見ることができました。
発掘体験では,作業員さんに掘り方を教わりながら地面を少しずつ削って土器を探しました。すぐに見つけた児童も多く,楽しみながら体験できました。
最後に,埋蔵文化財センターの職員が児童に向けて,どうしてこの仕事に就いたかを紹介しました。高校時代に考古学に興味を持ったことや進路について自分で調べて大学を探したこと,どんな勉強が必要だったかなどを話しました。
児童からは「遺跡をみたら土器がいっぱい出ていて,また建物跡もたくさんあって,びっくりした」,「発掘体験で土器が見つかったとき,とてもうれしかった」という感想が聞かれました。
今回の体験が,児童の学習はもとより地域理解や今後の進路選択に役立ち,未来の考古学者のタマゴが育っていたら何よりもうれしいことだと思います。
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![]() 竪穴建物跡から炭が多く見つかっており,建物が燃えたかもしれないことを説明しました |
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よみがえる「河口コレクション」の世界 里帰り展「出水貝塚」
第91号~名主原遺跡発掘調査ほか~
鹿児島県内に遺跡はいくつ? どこにあるの? ~遺跡GIS~
みなさんは,鹿児島県内にいくつ遺跡があるかご存知でしょうか。
100? 200? 1000?
実は,鹿児島県内には,およそ8600か所の遺跡があります。もちろん,その全てを発掘調査しているわけではなく,土器などの表面採取(地中の埋蔵文化財が耕作などで地上に現れ,見つかること。)や,試掘調査(限られた範囲を掘って遺跡の有無を確かめる。)などによって,遺跡と認定されているものもあります。規模や範囲,時代も様々ですが,どれも昔の人々の生活を知るために貴重なものです。
では,実際,どこに遺跡があるのか。それを調べるのが「遺跡GIS」です。「GIS」とは,「Geographic Information System」の略で,日本語では「地理情報システム」と訳されます。地球上に存在する建物や事象の位置情報を,コンピュータの地図上に可視化・表現します。
鹿児島県立埋蔵文化財センターでは,県内の遺跡に関する情報を,「埋蔵文化財情報データベース」としてインターネット上で公開しています。その中に「遺跡分布地図検索」(GIS)があります。
「埋蔵文化財情報データベース」
https://www2.jomon-no-mori.jp/kmai_public/index.html
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このように,「遺跡GIS」を利用することで,遺跡の位置や詳細を調べることができます。みなさんの住まれている地域にも,たくさんの遺跡があるかもしれませんよ。地域の歴史を知りたくなったら,「遺跡GIS」を,ご活用ください。
また,今回紹介した「埋蔵文化財情報データベース」では,時代やより詳しい遺跡の情報,発掘調査によって見つかった遺構や遺物の写真・図面も検索できます。こちらの活用方法についても,近日中に改めてご紹介いたします。
井手原遺跡(さつま町)~令和4年度刊行報告書から~
井手原遺跡(さつま町久富木)は,埋蔵文化財センターが,一般県道原口薩摩山崎停車場線整備改築事業に伴って令和3年度に調査した遺跡です。
調査では,旧石器時代や縄文時代草創期,縄文時代早期,縄文時代前期,縄文時代晩期,古代の遺構・遺物が発見されました。なかでも,旧石器時代の石器製作所跡の発見は,当時の人々の生活や行動を知るための手掛かりとなりました。また,縄文時代前期では,県内でも出土例が少ない西唐津式土器が見つかり,他の地域との交流の可能性をうかがわせる発見となりました。
以下のページから発掘調査報告書「井手原遺跡」(PDF)をダウンロードできます。詳しくは,そちらをご覧ください。
「発掘調査報告書一覧」
https://www.jomon-no-mori.jp/bunkazai-center/list
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久保田牧遺跡(鹿屋市)~令和4年度刊行報告書から~
久保田牧(くぼたまき)遺跡(鹿屋市吾平(あいら)町)は,縄文時代早期から中世にかけての複合遺跡です。主要地方道鹿屋吾平佐多線(吾平道路)改築事業に伴って,令和元年6月から令和4年1月まで発掘調査を実施しました。令和4年度に刊行した報告書『久保田牧遺跡1 古代以降編』では,古代・中世・近世の調査成果を紹介しています。
古代では,掘立柱建物跡・土坑・畝間状遺構・柱穴跡などの遺構が検出されました。遺物は,土師器・黒色土器・須恵器・刻書土器・墨書土器・土錘・石製品などが出土しました。中でも,多くの墨書土器が出土したことが特徴的です。
中世では,掘立柱建物跡・土坑・溝状遺構・古道などの遺構が検出されました。遺物は,土師器・須恵器・瓦質土器・青磁・白磁・染付・陶器・滑石製石鍋・古銭・鉄製品などが出土しました。
これらの遺構・遺物は,当時の大隅半島の様子を知る上で貴重な資料です。
以下のページから発掘調査報告書『久保田牧遺跡1 古代以降編』(PDF)をダウンロードできます。詳しくは,そちらをご覧ください。
「発掘調査報告書一覧」
https://www.jomon-no-mori.jp/bunkazai-center/list
また,主要地方道鹿屋吾平佐多線(吾平道路)改築事業に伴って,周辺の「立塚(たちづか)遺跡」・「名主原(みょうずばる)遺跡」の発掘調査も実施しております。その調査成果は改めてご紹介します。
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令和5年度河口コレクション展示~奄美諸島の遺跡から~
令和5年9月9日から,上野原縄文の森展示館の「河口コレクション」コーナーを「奄美諸島の遺跡」に入れ替え,展示しています。
奄美諸島における河口貞徳氏の遺跡調査は,1954(昭和29)年の「宇宿(うしゅく)貝塚(奄美市)」に始まり,1984(昭和59)年の「中甫(なかふ)洞穴」まで続きました。
今回紹介するのは,それらの遺跡から「中甫(なかふ)洞穴(知名町)」,「住吉(すみよし)貝塚(知名町)」,「喜念(きねん)貝塚(伊仙町)」,「面縄(おもなわ)貝塚(伊仙町)」,「嘉徳(かとく)遺跡(瀬戸内町)」です。それぞれの遺跡の特徴や代表的な遺物を展示,紹介しています。
これらの貴重な成果を,上野原縄文の森展示館にてご覧ください。
展示期間 令和5年9月9日(土)~令和6年1月8日(金)
河口コレクションについてはこちらもご覧ください。
河口コレクション – 鹿児島県立埋蔵文化財センター (jomon-no-mori.jp)
今回紹介した遺跡は,以下の報告書に掲載されています。
『鹿児島県立埋蔵文化財センター発掘調査報告書』(200)「吐噶喇・奄美の遺跡」(PDF)
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鹿児島城二之丸跡の調査
埋蔵文化財センターでは,現在,鹿児島城二之丸跡の発掘調査を行っています。鹿児島城の二之丸は,本丸(現在の黎明館)の南側にありました。鹿児島県立図書館もその範囲内に建っています。
8月から調査を行っており,瓦や陶磁器などの遺物が出土しました。また,土塁状の遺構や石を列状に並べた遺構が見つかっています。今後,古い絵図と比較するなどしながら,これら遺構の時期や用途を明らかにできればと思います。
調査は10月末まで続きます。今後の調査成果にご期待ください。
下記リンクから土塁状の遺構と石列の3Dを閲覧することができます。(外部サイトへ移動します)
土塁状遺構
https://skfb.ly/oKUCT
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