埋文だより第86号~鹿児島城跡大奥の遺構を発見ほか
試掘調査
10月18日,志布志市の道悦(どうえつ)遺跡において「試掘調査」を行いました。
「試掘調査」とは,開発などの工事前に,埋蔵文化財の有無を確認するために行う部分的な発掘調査のことをいいます。
今回は,重機(バックホー)を使い,4本のトレンチ(試し掘りの穴)を掘って調査を行いました。
重機で掘るといっても一度に掘ってしまうのではなく,幅2mほどの長方形の範囲を,地面と水平に少しずつていねいに掘り下げていきます。その際,地層の色や質(粘土質・砂質・火山灰層)の違いなどを観察しながら,途中で土器などが出てこないか,住居の跡などが見つからないか,確認しながら掘り進めました。
試掘調査で埋蔵文化財が確認された場合,遺跡の範囲や時代をより正確に把握する「確認調査」,全面的に発掘を行う「本調査」へと進みます。
遺跡の発掘調査は,このように様々な段階を経て行われているのです。
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神川小学校での出前授業
10月6日,錦江町立神川小学校で,ワクワク考古楽授業支援(出前授業)を行いました。
今回の授業は,5年生12名を対象に,「わたしたちの地域にある遺跡や文化財について知ろう」というめあてを立てて実施しました。
まず,姶良カルデラや阿多カルデラについて説明し,噴火の影響や土地の利用を考えさせました。
次に,本物の縄文土器に触れ,その形や文様をスケッチして,気づいたことを発表しました。
また,錦江町内の山ノ口遺跡について紹介し,遺跡から出土した土器を観察しました。
授業の後は,外に出て,火おこし体験に挑戦しました。「まいぎり」と「火きりうす」を使って,一生けん命に汗をかきながら取り組み,全員が火おこしに成功することができました。火が点いたときは,とても喜んでいました。
子どもたちは今回の授業を通して,身近に重要な文化財があることを知り,地域の歴史や昔の人々のくらしに関心をもつことができたようでした。
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立塚遺跡(鹿屋市吾平町)現地説明会開催について
現在,発掘調査中の立塚遺跡で,現地説明会を開催します。
開催日時:令和3年11月6日(土) 午後1時30分~4時 (受付開始 12時30分~)
実施内容:遺跡の概要説明・遺跡や出土品の見学
開催場所:立塚遺跡(鹿屋市吾平町麓)
対 象:鹿屋市にお住まいの方
参加定員:80名程度
申込方法:電話による事前申込をお願いします
0995-48-5815
現地説明会参加にあたっての注意事項(詳細はこちらのチラシをご覧ください。)
① 新型コロナ感染拡大防止のため,マスク着用,来跡時の検温及び体調確認,並びに手指のアルコール消毒にご協力ください。
② 付近は住宅地となっております。また,駐車場入り口までの道幅が狭くなっております。交通安全に十分に注意してください。
③ 来跡時及び帰宅時は図の矢印のとおり一方通行とします。
④ 駐車場内では,安全確保・混雑緩和及び出車をスムーズに行うために駐車位置を誘導員が指示させていただきます。
⑤ 帰宅時の出庫の順番等については誘導員が指示させていただきますので,ご協力ください。また,交通安全の確保及び渋滞緩和のため,左折での出庫をお願いします。
~奄美大島・徳之島の調査~ 令和3年度第2回河口コレクション
今回の展示では,奄美大島と徳之島の遺跡について紹介します。
奄美諸島における河口氏の遺跡調査は,1954(昭和29)年の奄美大島学術調査団として行った奄美市宇宿貝塚の発掘調査から始まり,1984(昭和59)年の沖永良部島に所在する中甫洞穴の発掘調査まで続けられました。その間,奄美諸島の土器編年を中心に研究を進め,多くの論文を発表しています。
これらの調査により,鹿児島県本土から約400㎞離れた奄美大島や徳之島の先史文化が明らかになりました。また,さらに約200㎞先に位置する沖縄における遺跡の解明にも大きく寄与しました。
その調査成果と出土品を,上野原縄文の森でご覧ください。
【展示期間】
令和3年9月18日(土)~令和4年1月14日(金)
【今回紹介する遺跡】
宇宿貝塚(奄美市笠利町宇宿)
朝仁貝塚(奄美市名瀬大字朝仁)
嘉徳遺跡(瀬戸内町嘉徳)
喜念貝塚(伊仙町面縄)
面縄貝塚(伊仙町面縄)
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施設内見学の再開について
埋蔵文化財センターの施設内見学を一部再開します。
見学可能な場所は,1階エントランス・2階廊下です。
それ以外の場所や整理作業の様子は見学できません。
なお,屋外無料施設は利用可能です。
第85号~日本最古級の舷側板ほか
夏の研修講座
埋蔵文化財センターでは,学校の先生方や市町村の埋蔵文化財担当者向けに研修講座を開講しています。
今年も,7月29・30日に「パワーアップ(10年経験)研修講座」の1回目を,8月5・6日に「パワーアップ研修講座」の2回目と「先生のための考古学講座」,「埋蔵文化財専門職員養成講座(初級講座)」を実施しました。
いずれの講座も,1日目は埋蔵文化財センターの業務と役割について紹介し,土器等の整理作業を体験してもらいました。2日目は上野原縄文の森の施設見学と縄文体験をしてもらいました。
参加されたみなさんは,講座を通して考古学についての理解を深めたり,鹿児島県の歴史や文化に対する興味・関心を高めたりすることができたようです。また,上野原縄文の森の見学では,県内から出土した遺構・遺物を見ることで,その素晴らしさに感動されていました。
また,学校の先生方におかれては,児童・生徒のみなさんの体験学習の場として,埋蔵文化財センター・上野原縄文の森を活用していただければと思いますので,児童・生徒のみなさんをぜひ連れてきてください。
今回の研修で学ばれたことが,各学校で児童・生徒のみなさんの学習に役立ったり,各市町村の業務に活かされたりすることを期待しています。
来年度も多くの方々の参加をお待ちしております。
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大口高等学校での出前授業
7月27日,鹿児島県立大口高等学校でワクワク考古楽を実施しました。
授業では,始めに埋蔵文化財センターが実施した発掘調査の結果をもとに,鹿児島城御楼門や上野原縄文の森の竪穴住居の復元が行われたことを紹介しました。
土器の底の圧痕(土器作りの過程で植物の種実や昆虫・貝などが粘土の中に混入し,土器を焼成した際に焼け落ちて空洞になったもの)の調査によって,縄文時代後期に安定した食糧資源があったことが裏付けられたこと,さらに,南九州には多くの火山があり,その噴出物が積もった地層の年代測定を手掛かりとして,発掘調査していることも紹介しました。中でも鹿児島の代表的な縄文時代早期の遺跡として,上野原遺跡について紹介し,鹿児島独特の文化があったことにも触れました。
次に,縄文時代から古墳時代までの土器の移り変わりとその特徴について説明しました。
伊佐市には,塞ノ神(せのかん)式土器や手向山(たむけやま)式土器と呼ばれる縄文時代早期の土器型式の標式遺跡(特定の地域や時代・時期に流行した土器の特徴を示す契機となった遺跡)があることを紹介しました。他にも,時代ごとの土器の特徴を感じられるように,伊佐市下鶴遺跡で出土した弥生土器,土師器,須恵器などの実際の遺物にも触れて観察しました。
生徒たちは,発掘調査の結果からわかった縄文時代の人々の暮らしの特徴について,興味をもって聞いてくれました。
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第61回企画展「新発見! かごしまの遺跡2021~発掘調査速報展~」が始まりました
7月17日(土),上野原縄文の森第61回企画展「新発見! かごしまの遺跡2021~発掘調査速報展~」が始まりました。
今回の企画展は, 令和2年度に鹿児島県立埋蔵文化財センター及び(公財)埋蔵文化財調査センターが,発掘調査を実施・報告書刊行した遺跡の成果を紹介します。
江戸時代の犬追物馬場跡が確認された鹿児島城跡(鹿児島市)や,縄文時代前期から中期の土器が多く出土した細山田段遺跡(大崎町),国内最古級となる弥生時代前期後半の準構造船の舷側板(げんそくばん)が出土した中津野遺跡(南さつま市)など,最新の鹿児島の歴史をご覧ください。
〇 今回紹介する遺跡
■ 近代
遺跡西南戦争関連遺跡【滝ノ上火薬製造所跡】(鹿児島)・【高熊山激戦地跡】(伊佐市)・【チシャガ迫堡塁跡群】(霧島市)・【岩川官軍墓地】(曽於市)
■ 近世
鹿児島城跡【犬追物馬場・火除地】(鹿児島市)
■ 中世
北山遺跡(阿久根市),川久保遺跡(鹿屋市)
■ 古代
立塚遺跡(鹿屋市),久保田牧遺跡(鹿屋市),原村遺跡(曽於市)
■ 古墳時代
六反ヶ丸遺跡(出水市)
■ 弥生時代
立塚遺跡(鹿屋市),中津野遺跡(南さつま市)
■ 縄文時代
牧B遺跡(曽於市),原村遺跡(曽於市),細山田段遺跡(大崎町),山ノ段遺跡(出水市),小牧遺跡(鹿屋市)
■ 旧石器時代
小牧遺跡(鹿屋市),川久保遺跡(鹿屋市)
■ 新指定文化財
出水貝塚出土品(出水市・河口コレクション)
〇 開催期間
令和3年7月17日(土)~11月7日(日)
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