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カテゴリー: 河口コレクション

~弥生時代の祭祀遺跡「山ノ口遺跡」~令和3年度第1回河口コレクション

 上野原縄文の森で現在,河口コレクションの山ノ口遺跡(錦江町)を展示しています。

 山ノ口遺跡は,南九州の弥生時代を代表する遺跡です。昭和33(1958)年から昭和36(1961)年にかけて,河口貞徳氏を中心に3回の発掘調査が行われました。

 発掘調査の結果,地表から1mほど掘り下げた砂地の上に,軽石を円形に並べた配石遺構(はいせきいこう)が9基検出されました。直径が3mのものや立石(りっせき)を伴うものもありました。配石遺構の周りには,ほぼ完全な形の土器や軽石製品が並べられていました。

 土器は,赤く塗られた北部九州から持ち込まれた甕形土器やジョッキ形の土器,それに頸(くび)の長い壺や台付の鉢形土器など,一般的な集落遺跡では出土しない形のものでした。また,土器には故意に孔があけられていました。

 さらに,軽石製品は男女を象った岩偶(がんぐう),男女の生殖器を象ったもの,勾玉(まがたま)などがありました。

 これらのことから,山ノ口遺跡は祭祀(さいし)のための特別な場所だったと考えられます。県内外でもこの様な遺跡は他になく,大変重要な遺跡であることから,遺跡は町指定史跡となり,出土品は県指定有形文化財になっています。

 その貴重な出土品を,上野原縄文の森でご覧ください。

展示期間
令和3年5月15日(土)~9月17日(金)

 

令和2年度 第3回「河口コレクション」展示 ~標式遺跡~

 1月15日に,上野原縄文の森で展示している「河口コレクション」コーナーの入れ替えを行いました。

 今回は,「標式遺跡(特定の地域や時代・時期に流行した土器の特徴を示す契機となった遺跡)」をテーマに,河口氏が発掘調査を行った「岩崎遺跡(錦江町田代麓)」,「春日町遺跡(鹿児島市春日町)」の2遺跡を紹介しています。

 岩崎遺跡の発掘調査は,昭和25(1950)年12月5日~9日に行われました。調査の結果,比較的浅い上部から出土する土器と,下部の深いところから出土する土器があり,それぞれ形状が異なることから,岩崎上層式土器,岩崎式土器と呼んで報告しています。また,岩崎式土器を縄文時代中期後半に位置づけ,岩崎上層式土器は指宿式土器に類似することから,縄文時代後期前半に位置づけました。

 春日町遺跡は,昭和27(1952)年に発見され,翌年まで3次にわたって発掘調査が行われました。発掘調査には,河口氏が教鞭(きょうべん)をとっていた鹿児島市立玉龍高等学校の生徒たちが多く参加しました。この遺跡で見つかった春日式土器は,瀬戸内地方の船元Ⅲ・Ⅳ式土器や里木Ⅱ式土器の影響を受けてつくられたことが分かってきました。また,春日式土器は形や文様の変遷から,大きく3つの時期に細分されており,その年代も縄文時代中期中頃から後半に該当する約4,800~4,600年前と考えられています。

 上野原縄文の森にて,ご覧ください。

展示期間
令和3年1月16日(土)~令和3年5月14日(金)

山ノ口遺跡の里帰り展示(河口コレクション)の中止について

 錦江町文化センターでおこなっていた「山ノ口遺跡の里帰り展示(河口コレクション)」は、同町の公共施設貸し出しの中止のため、現在公開を中止しております。
 また、1月6日(水)に予定していました県立埋蔵文化財センター職員による展示解説も、中止となりました。
 ご了承ください。

山ノ口遺跡出土品の里帰り展示

 山ノ口遺跡(肝属郡錦江町)は,昭和33年~36年に故河口貞徳氏が主体となって,発掘調査を実施した遺跡です。

 南九州の弥生時代中期を代表する標式遺跡(特定の地域や時代・時期に流行した土器の特徴を示す契機となった遺跡)であるとともに,環状の配石遺構の周囲に岩偶などの軽石製品や孔が開けられた多数の土器などが出土した祭祀遺跡として学史的にも著名です。

 県内外でもこのような遺跡は他になく,大変重要な遺跡であることから,遺跡は町指定史跡となっています。また,出土品は県指定有形文化財になっており,県立埋蔵文化財センター,錦江町,県歴史・美術センター黎明館で保管されています。

 今回,その山ノ口遺跡出土品の里帰り展示を,錦江町で実施することとなりました。実に,60年ぶりの里帰りとなります。

 貴重な出土品の実物展示,発掘調査時の写真展示などを行っていますので,ぜひ,会場にお越しください。


 展示会場:錦江町文化センター1階 (肝属郡錦江町城元910番地)

 展示期間:令和2年12月19日(土)~令和3年1月11日(月)
      12月21日,12月28日~1月4日,1月12日は休館

 展示解説:県立埋蔵文化財センター職員による解説
      第1回 12月26日(土) 10:00~14:00
      第2回 1月6日(水) 10:00~14:00(中止)

 主催:県立埋蔵文化財センター

 

展示会場の錦江町文化センター

パネルや写真で山ノ口遺跡を紹介

出土品の展示

 

 

 

令和2年度 第2回「河口コレクション」展示 ~霧島市内の遺跡~

 9月18日に,上野原縄文の森で展示している「河口コレクション」コーナーの入れ替えを行いました。

 今回は「河口貞徳氏の軌跡Ⅲ(霧島市内の調査遺跡)」と題して,口輪野遺跡(霧島市国分川内),平栫遺跡(同市国分上井),石峰遺跡(同市溝辺町麓),廻城跡(同市福山町福山)の4つの遺跡を紹介しています。

 特に平栫遺跡は,出土した縄文時代早期後半の土器を河口氏が「平栫(ひらがこい)式土器」と名付け,標式遺跡(特定の地域や時代・時期に流行した土器の特徴を示す契機となった遺跡)となっています。

 霧島市内には,上野原遺跡だけでなく,このように貴重な遺跡が数多くあります。今回の展示,上野原縄文の森でご覧ください。

展示期間
令和2年9月19日(土)~令和3年1月15日(金)

口輪野遺跡・平栫遺跡

石峰遺跡・廻城跡

平栫遺跡の発掘調査風景

 

河口コレクション報告書から~「出水貝塚」について

 出水貝塚は,鹿児島県出水市中央町にある,縄文時代早期から後期の遺跡です。
 本貝塚は,1920年に初めて存在が確認され,1950年代に故河口貞徳氏を中心として発掘調査が行われました。

 本貝塚は,古くから出水式土器の標式遺跡(特定の地域や時代・時期に流行した土器の特徴を示す契機となった遺跡)として知られています。出水式土器は,縄文時代後期初頭に九州西部を中心として好んで用いられたと考えられています。

 貝層の上層から市来式土器・出水式土器等の縄文時代後期土器が,下層から南福寺式土器・阿高式土器等の縄文時代中期土器,さらに下層の黒色土層からは縄文時代早期の押型文土器が出土しており,縄文時代早期から後期土器の層位的な出土状況及び相対関係が把握できる重要な遺跡です。

 また,縄文時代中期・後期に埋葬された人骨も見つかっています。報告書では保存状態が良好な6体について述べられており,当時の縄文人の形質や埋葬方法を調べる上で貴重な遺跡といえます。

 今回紹介した県立埋蔵文化財センター発掘調査報告書(201)「出水貝塚」は,こちらからダウンロードできます。

出土した人骨
出水式土器
河口氏調査時野帳(記録)

 

令和2年度 第1回「河口コレクション」展示 ~洞穴遺跡~

 5月15日に,上野原縄文の森で展示している「河口コレクション」コーナーの入れ替えを行いました。

 日本考古学協会は,1962(昭和37)年,洞穴遺跡調査特別委員会を設置して全国各地の洞穴遺跡を発掘調査し,その成果は1967(昭和42)年に『日本の洞穴遺跡』として刊行されました。この中には,河口氏が中心となって調査した「黒川洞穴(日置市)」と「片野洞穴(志布志市)」が紹介されています。

 今回は,「河口コレクションの中の洞穴遺跡」と題して,前述の2遺跡に加え,「鍋谷洞窟(姶良市)」と,今年,4月28日付でその出土品が鹿児島県の指定文化財となった「中甫洞穴(知名町)」の4遺跡を紹介しています。

 洞穴遺跡は,土の堆積が緩やかであり,各時代の土層が細かく分かれているので,層ごとの遺構や遺物を把握しやすく編年研究に適しています。また,酸性の火山灰にさらされることが少ないので,人や動物の骨,骨角器や貝製品の残りが良く,情報量が豊富です。

 ぜひ,上野原縄文の森で,ご覧ください。

展示期間
令和2年5月16日(土)~令和2年9月18日(金)

令和元年度 第2回「河口コレクション」展示

9月21日に,上野原縄文の森で展示している「河口コレクション」コーナーの入れ替えを行いました。

今回は,「河口貞徳氏の軌跡2~昭和30年代の発掘調査~」と題して,「和田前遺跡(南九州市知覧町)」,「鍋谷洞窟(姶良市平松)」,「片野洞穴(志布志市志布志町)」の3遺跡を紹介しています。

「和田前遺跡」と「鍋谷洞窟」では,塞ノ神(せのかん)式土器という縄文時代早期の土器が出土しています。河口貞徳氏によって完全な形に復元された土器は,当時出版された書籍などで広く紹介されました。その土器を,今回展示しています。他にも,発掘調査当時の写真や図面の原図等も見ることができます。
ぜひ,上野原縄文の森までお越しください。

展示期間
令和元年9月21日(土)~令和2年1月18日(金)

「河口コレクションとは?」の疑問に答える! ~第1弾・山ノ口遺跡~

この報告書は,「河口コレクション整理活用事業」に伴い,平成28年度~29年度に整理作業を行った肝属郡錦江町馬場に所在する山ノ口遺跡の発掘調査の記録です。
山ノ口遺跡は,昭和33年~36年に故河口貞徳氏が主体となって,発掘調査が実施されました。南九州の弥生時代中期を代表する標式遺跡であるとともに,環状の配石遺構の周囲に岩偶などの軽石製品や孔が開けられた多数の土器などが出土した祭祀遺跡として学史的にも著名です。
報告書の中では,現代的な視点での山ノ口遺跡の再検討はもちろんのこと,河口氏の発掘調査歴一覧や氏所有の資料が寄贈されるまでの経緯,寄贈されたコレクションの内容なども掲載されています。まさに「河口貞徳コレクションとは何か?」という疑問に答えることができる報告書となっています。

※今回紹介した県立埋蔵文化財センター発掘調査報告書(195)「山ノ口遺跡」は,こちらからダウンロードできます。