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投稿者: 管理人

「発掘された日本列島2020」展へ出品

 5月19日,文化庁が主催する「発掘された日本列島2020」展の集荷作業がありました。

 今回出品するのは,当センターが所蔵する鞍曲(くらまがり)遺跡(南九州市知覧町)の旧石器時代のナイフ形石器や接合資料など,計24点です。これらは,南九州における石材原産地近隣の石器製作遺跡の様子を伺い知ることができる良好な資料です。

 「発掘された日本列島2020」展は,東京都江戸東京博物館をはじめとして,以下の日程で各地を巡回する予定です(変更になる可能性もあります)。お近くにお越しの際は,ぜひ会場でご覧ください。

  • 東京都江戸東京博物館
    令和2年6月13日(土)~令和2年8月3日(月)
  • 新潟県立歴史博物館
    令和2年8月22日(土)~令和2年9月27日(日)
  • 福島県立博物館
    令和2年10月10日(土)~令和2年11月15日(日)
  • 一宮市博物館
    令和2年11月28日(土)~令和2年12月27日(日)
  • 中津市歴史博物館
    令和3年1月16日(土)~令和3年2月21日(日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2回「鹿児島県の製鉄・鍛冶遺跡」

Ⅰ.製鉄・鍛冶とは

  1.  製鉄とは,鉄鉱石や砂鉄などの材料から鉄製品の材料となる鉄を作る作業のことを言い,製錬(せいれん)とも言います。この製鉄によって鉄塊という鉄製品を作る基ができます。鉄の原材料の一つである砂鉄は,鹿児島では特に種子島産が有名です。
  2.  鍛冶とは製鉄によりできた鉄塊から鉄製品を作る作業のことです。鉄塊から不純物を取り出す精錬鍛冶と,鉄を加熱して叩いて鉄製品を作る鍛錬鍛冶の2つに分けられます。皆さんがテレビなどでよく見る鉄をハンマーで叩いているシーンは鍛錬鍛冶になります。昔の人々はこの鍛冶により生活に必要な鍋,農業で使う鎌・鋤・鍬など,武器である剣・刀・鏃などを作ったり,修理したりしていました。

Ⅱ.鹿児島県の製鉄遺跡

  1.  鹿児島県では10年程前までは中世(鎌倉時代~室町時代)以前の古い製鉄遺跡は発見されていませんでした。唯一,南大隅町に13世紀(鎌倉時代)の製鉄遺跡ではないかとされる炭屋製鉄遺跡がありますが,出土している遺物は18世紀(江戸時代)の物なので,はっきりはしていません。鹿児島では南九州市知覧にある近世(江戸時代)の厚地松山製鉄遺跡などが有名でした。
  2.  ところが,ここ10年程でまずは奄美諸島の喜界島(地図中①)で相次いで製鉄遺跡が見つかりました。喜界町大ウフ遺跡では製鉄作業の時に出る製錬滓が出土し,前畑遺跡では砂鉄が出土しました。どちらも10~12世紀(平安時代~鎌倉時代の初め)と考えられています。また,崩リ(くんでぃー)遺跡からは11世紀末~12世紀と考えられる製鉄炉の炉跡や製錬滓が出土しました。
  3.  喜界島での製鉄遺跡の発見から数年後,鹿屋市串良町細山田にある川久保遺跡(地図中②)で7世紀後半~8世紀(飛鳥時代~奈良時代)の製鉄炉が出土しました。また,志布志市の上苑A(うぇんそん)遺跡(地図中③)からも6世紀末~7世紀(古墳時代~飛鳥時代)の土器とともに製錬滓が出土しました。
川久保遺跡 製鉄関連遺構(土坑270号・271号)

Ⅲ.鹿児島県の鍛冶遺跡

  1.  鍛冶作業は製鉄作業と違い,材料となる鉄塊さえあれば作業ができるため,鹿児島県でも古くから見つかっています。鍛冶を行っていた鍛冶炉は指宿市橋牟礼川遺跡(地図中④)で8世紀のものが,薩摩川内市の鍛冶屋馬場遺跡(地図中⑤)で10世紀中ごろ,日置市の犬ヶ原遺跡(地図中⑥)で11~12世紀のものがそれぞれ見つかっています。また,最近では製鉄遺跡でも紹介した川久保遺跡でも鍛冶炉を持つ2基の竪穴建物跡が見つかっています(4~5世紀)。
  2.  また,鍛冶炉自体は見つかっていませんが,たくさんの遺跡で鍛冶作業に関わる遺物である鉄滓(鍛冶作業の時に出る不純物のかたまり)や,鞴(ふいご)の羽口(鍛冶炉に空気を送り込む送風機の部品)といったものが出土しています。なかには鹿屋市王子遺跡(地図中⑦)のように弥生時代の遺跡から鉄滓が出土している例もあり,鍛冶作業は弥生時代から行われていたことが分かります。

文責 岩永勇亮

川久保遺跡 16号竪穴建物跡(鍛冶建物)
川久保遺跡出土 鞴の羽口 上から(転用品)
川久保遺跡出土 鞴の羽口 横から(転用品)

 

令和2年度 第1回「河口コレクション」展示 ~洞穴遺跡~

 5月15日に,上野原縄文の森で展示している「河口コレクション」コーナーの入れ替えを行いました。

 日本考古学協会は,1962(昭和37)年,洞穴遺跡調査特別委員会を設置して全国各地の洞穴遺跡を発掘調査し,その成果は1967(昭和42)年に『日本の洞穴遺跡』として刊行されました。この中には,河口氏が中心となって調査した「黒川洞穴(日置市)」と「片野洞穴(志布志市)」が紹介されています。

 今回は,「河口コレクションの中の洞穴遺跡」と題して,前述の2遺跡に加え,「鍋谷洞窟(姶良市)」と,今年,4月28日付でその出土品が鹿児島県の指定文化財となった「中甫洞穴(知名町)」の4遺跡を紹介しています。

 洞穴遺跡は,土の堆積が緩やかであり,各時代の土層が細かく分かれているので,層ごとの遺構や遺物を把握しやすく編年研究に適しています。また,酸性の火山灰にさらされることが少ないので,人や動物の骨,骨角器や貝製品の残りが良く,情報量が豊富です。

 ぜひ,上野原縄文の森で,ご覧ください。

展示期間
令和2年5月16日(土)~令和2年9月18日(金)

第57回企画展データファイル公開について

現在,上野原縄文の森では第57回企画展「御楼門建立(たつ)~発掘調査から解明された鹿児島(鶴丸)城の姿~」を開催しています。しかしながら,新型コロナウィルス感染拡大防止のため,当企画展をご覧いただけない方も多数いらっしゃいます。
そこで,企画展の見どころをまとめたデータファイルを特別にホームページ上にて公開いたします。
(タイトルをクリックすると,各章の内容をご覧いただけます。)

 

第1章:御楼門建立
「御楼門」とは?建設の意義,建設の様子,完成した御楼門などを写真等で紹介します。
第2章:昭和・大正・明治の鹿児島(鶴丸)城の姿
鹿児島大学医学部や文理学部,官立第七高等学校造士館が置かれた時代を紹介します。
第3章:江戸時代の鹿児島(鶴丸)城の姿
御楼門の礎石や地業等の基礎構造,排水溝,石垣の裏込め,石塁等の遺構や出土遺物について紹介します。
出土した様々な瓦
過去の発掘調査成果

岩川官軍墓地の調査

5月18日から,岩川官軍墓地(曽於市大隅町岩川)の確認調査が始まりました。岩川官軍墓地は,1877(明治10)年の西南戦争で亡くなった官軍(政府軍)の戦死者を埋葬した墓地です。陸軍大尉山形照方の墓石のほか,約80基が残っています。

確認調査では,墓石の大きさや配置を記録したり,トレンチ(調査のための穴)を掘って,墓地が作られた当時から現在までの土地の変化を確認したりする予定です。

 

第57回企画展講演会について(お知らせ)

第57回企画展講演会は定員に達したため,受付を終了します。

 

 

企画展講演会
⑴ 日 時 令和2年6月6日(土)10:00~11:30
⑵ 講 師 県立埋蔵文化財センター 文化財主事 永濵 功治 氏
⑶ 内 容 「御楼門周辺の発掘調査」


⑷ 場 所 上野原縄文の森展示館多目的ルーム
⑸ 定 員 30人程度(要事前申込み・鹿児島県内在住者)
⑹ 資料代 100円

 

*新型コロナウィルス感染拡大防止のため下記の点にご協力をお願いします。
① 必ず事前にお電話,Hpなどでお申し込みをお願いします。
② 当日,37.5℃以上の発熱,咳,咽頭痛などの症状のある方はご参加いただけません。
③ マスクの着用,入館時の手指の消毒をお願いします。
④ 参加者は県内在住の方に限らせていただきます。
⑤ ギャラリートークは3密をさけるため,中止とさせていただきます。展示館の見学は,講師より「見どころ」解説を講演会でご案内した上で,見学いただけます。(1回の入室15人定員入れ替え制)

第57回企画展「御楼門建立~発掘調査から解明された鹿児島(鶴丸)城の姿~」

上野原縄文の森 第57回企画展
「御楼門建立~発掘調査から解明された鹿児島(鶴丸)城の姿~

開催期間:令和2年4月25日(土)~令和2年8月30日(日)
開催期間が延長しました!

 2020年3月,城下町鹿児島のシンボルである鹿児島(鶴丸)城「御楼門」が完成しました。
県立埋蔵文化財センターが,鹿児島(鶴丸)跡保全整備事業に伴い御楼門周辺の発掘調査を行った結果,礎石や地業等の御楼門の基礎構造や,排水溝,石垣の裏込め,石塁等の遺構を確認し,鬼瓦をはじめとする瓦や陶磁器等,江戸時代の場内の様子を物語る遺物も多量に出土しました。
今回の企画展では,御楼門付近の発掘調査成果を中心に,これまで知られていなかった鹿児島城の機能や構造を紹介し,あらためてその姿に迫ります。(データファイルはこちら)

企画展講演会※定員に達しました
⑴ 日 時 令和2年6月6日(土)10:00~11:30
⑵ 講 師 県立埋蔵文化財センター 文化財主事 永濵 功治 氏
⑶ 内 容 「御楼門周辺の発掘調査」


⑷ 場 所 上野原縄文の森展示館多目的ルーム
⑸ 定 員 30人程度(要事前申込み・鹿児島県内在住者)
⑹ 資料代 100円
申込フォームはこちら

*新型コロナウィルス感染拡大防止のため下記の点にご協力をお願いします。
① 必ず事前にお電話,Hpなどでお申し込みをお願いします。
② 当日,37.5℃以上の発熱,咳,咽頭痛などの症状のある方はご参加いただけません。
③ マスクの着用,入館時の手指の消毒をお願いします。
④ 参加者は県内在住の方に限らせていただきます。
⑤ ギャラリートークは3密をさけるため,中止とさせていただきます。展示館の見学は,講師より「見どころ」解説を講演会でご案内した上で,見学いただけます。(1回の入室15人定員入れ替え制)

【調査報告】飛鳥時代の溝に囲まれた集落跡を発見

令和元年度の調査報告を更新しました。

【令和2年3月26日発表】

公益財団法人鹿児島県文化振興財団埋蔵文化財調査センターが発掘調査報告書作成を行った春日堀遺跡(志布志市)で発見された,飛鳥時代の集落跡について。

【内容】
(1)  菱田川の右岸,標高約29mの河岸段丘上に位置する遺跡で,竪穴住居跡9軒,掘立柱建物跡7棟,地下式横穴墓1基,溝跡3条からなる飛鳥時代(7世紀中頃~後半)の集落跡が確認された。
(2)  集落跡は竪穴住居跡と掘立柱建物跡が大型の溝跡に囲まれている。
(3)  遺跡では瀬戸内地域で生産された須恵器(高坏)や宮崎平野で生産されたとみられる坏が出土し,広域的な交易活動がうかがわれる。また,溝跡から武器と考えられる鉄鏃が8本出土している点も注目される。

【評価】
(1) 南九州では初めて,飛鳥時代の溝に囲まれた集落跡の存在が明らかになった。居住域や墓域も確認されており,集落跡の様相が分かる重要な調査事例である。
(2) 大型の溝跡には防御的な性格がうかがわれ,鉄鏃の出土は,7世紀中頃~後半,大隅半島内部に生じていた社会的緊張を示すものとみられる。
(3) 本遺跡は,文献に隼人が登場する時代の遺跡である。本県において,飛鳥時代の発掘調査事例は少なく,考古学から南九州の古代史を考える上でも重要である。

【春日堀遺跡の概要】
(1) 調査起因:東九州自動車道建設
(2) 調査期間:平成26~30年度
(3) 調査面積:20,600㎡
(4) 指 導 者:鹿児島大学 中村直子教授
(5) その他:発掘調査報告書は令和2年3月に刊行