名主原遺跡現地説明会を行いました
12月17日(土),名主原遺跡(鹿屋市吾平町下名)の現地説明会を行いました。
当日は朝から雨が降る肌寒い中でしたが,県内各地や県外から合わせて80人の見学者が来跡されました。
現地説明会では,まず地層の説明をして,名主原遺跡の主な時代について紹介しました。
次に,遺跡で多く見つかっている,花弁形住居跡や竪穴建物跡について紹介しました。見学者の方々からは「花弁形住居というのを初めて見ました。鹿児島では多く見つかるのですか」,「ひとつの建物に,何人ぐらいの人が住んでいたのですか」といった質問などがあり,興味深く見学されていました。
受付の横では,遺跡で出土した,埋設土器・ガラス小玉・砥石・石包丁などを展示して紹介しました。本物の土器や石器を間近で見られ,説明を聞きながら,当時の人々の暮らしを想像されているようでした。
当日の配布資料は,以下のリンクからダウンロードできます。
虎居城跡の発掘調査
虎居城跡は,さつま町にある中世山城跡の遺跡です。平成 20 ~ 21 年度に川内川激甚災害対策特別緊急事業の分水路建設に伴い約 60,000 ㎡が調査され,土師器や青磁・白磁など多くの遺物と共に,土塁や空堀,虎口といった山城跡ならではの遺構が見つかりました。
平成26・28年度には,北薩広域公園整備のため,確認調査が行われました。溝状遺構,炉跡,柱穴等の遺構とともに,土師器や陶磁器,金属製品等が出土しました。
今回も北薩広域公園の整備事業に伴い,令和4年11月から令和5年1月まで発掘調査を行っています。
これまでの調査で,中世の青磁や白磁,近世の染付や薩摩焼が見つかっており,山城跡の様子が明らかになってきました。1月までの調査期間で,さらなる発見が期待できます。
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かごしま遺跡フォーラム報告
10月22日(土)に,霧島市の国分シビックセンターで,「かごしま遺跡フォーラム」を開催しました。
今回は,県立埋蔵文化財センター設立30周年,上野原縄文の森開園20周年,埋蔵文化財調査センター設立10周年の節目となるフォーラムで,「上野原遺跡と南の縄文世界」,「縄文時代の植物利用について」という2部構成で実施しました。
第1部は,県立埋蔵文化財センターの元次長で南九州縄文研究会前会長の新東晃一さんが,「上野原遺跡と南の縄文世界~縄文文化観の転換に迫る~」と題して講演されました。
上野原遺跡の発見と発掘調査の経緯についての話で,発掘調査によって分かった縄文時代早期の様子や南九州の縄文土器の特徴について説明されました。
第2部は,3人の方が講師となり,それぞれの発表がありました。
最初は,鹿児島県教育庁文化財課の眞邉彩さんが,「明らかになった縄文人の知恵と技」と題して発表されました。土器に残る「圧痕」(土器作りの過程で植物の種実や昆虫・貝などが粘土の中に混入し,土器を焼成した際に焼け落ちて空洞になったもの。また,布やカゴなどが圧着して付いた痕跡)から分かった,縄文時代の植物利用について発表されました。
次に,県立埋蔵文化財センター元所長で,現在は環境省環境カウンセラーとして活躍されている寺田仁志さんが,「縄文人を支えた南の豊かな森」と題して,旧石器時代から縄文時代にかけての南九州の気候や植生,食について発表されました。
最後は,熊本大学大学院の小畑弘已教授が,「土器を掘る~X線が映し出す雑草・害虫の真の姿~」と題して,熊本大学で行っているX線を使って土器の内部まで見透かす最新技術によって判明した,縄文時代の植物やその種子,昆虫についての発表がありました。
その後は,発表者3人がパネリストとなり,パネルディスカッションが行われ,縄文時代の人々が食べていたと思われる植物や,その栽培について議論が交わされました。
当日は,200人もの参加者があり,縄文時代の人々がどのような生活をしていたのか,そして最新の研究の成果について,聞き入っていました。ご参加ありがとうございました。
また,今回のフォーラムの資料集兼記録集は,上野原縄文の森で販売しております。興味のある方はぜひ,ご購入下さい。購入については,上野原縄文の展示館(0995-48-5701)までご連絡ください。
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【曽於市立岩南小学校の職場体験】
9月21日,曽於市立岩南小学校の6年生8名が埋蔵文化財センターの職場体験に来ました。
まず,センター内の整理作業室や写場,分析室などを見学しました。子どもたちは,メモを取りながら話を聞き,気になったことを質問することができました。
次に,水洗いや拓本の整理作業を体験しました。どちらの作業も本物の土器を使って行ったので,始めは緊張していましたが,だんだんと慣れてきて楽しく体験できたようでした。
今回の体験を通して,埋蔵文化財への関心・理解を深めたり,働くことの大切さを学んだりできたのではないでしょうか。
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埋蔵文化財技術講座
埋蔵文化財センターでは,市町村の埋蔵文化財担当職員を対象とした「埋蔵文化財技術研修講座」を開催しています。今回,以下の2講座を開催しました。
・ 基礎講座 7月21・22日
埋蔵文化財に係る基礎的な実務を学ぶ講座です。埋蔵文化財保護行政に関する法律や,整理業務の実際を学びました。また,鹿屋市の名主原遺跡で発掘の研修を行いました。
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・ 技術講座(調査技術) 8月18・19日
発掘調査や報告書作成についての具体的な知識・技術を学び,必要な技能を習得することを目的とした講座です。今回は,屋外での遺構の測量や図面作成から,報告書作成のためのトレース・版組などを行いました。
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夏季の教職員向け研修講座
埋蔵文化財センターでは,夏休み期間中に学校の教職員向けに,上野原縄文の森・県総合教育センターと共催で研修講座を毎年開催しています。
今年度も,下記の研修講座を開催し,多くの教職員の参加がありました。
パワーアップ研修講座(10年経験者研修) 7月28・29日,8月4・5日
フレッシュ研修講座(初任者研修) 8月9・10日
先生のための考古学講座 8月9・10日
地域体験研修 8月22~24日
それぞれの講座では,埋蔵文化財センターの業務と役割,遺跡の発掘調査課から分かった鹿児島の歴史と文化について学びました。また,実際の整理作業を体験したり,地域の文化財を活かした授業づくりを行ったりしました。
縄文の森での研修では,上野原遺跡のフィールドワークや勾玉アクセサリー作りに取り組みました。
参加された先生方からは,「地域の文化財に対して更に興味を持つことができ,学校の教育課程に取り入れていくことの大切さを感じることができた」などの感想をいただきました。
来年度も多くの参加をお待ちしております。
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霧島市文化財少年団
霧島市文化財少年団は,霧島市が行っている事業です。霧島市内在住の小学生を対象に「見る・聞く・触れる体験活動」をとおし,ふるさとの歴史や衣住食の文化に対する理解を深めることを目的に結成されています。
今回その活動の一環として,8月4日に埋蔵文化財センターと上野原縄文の森を見学しました。
エントランスで埋蔵文化財センターの役割と発掘調査についての説明を聞いた後,センター内で行っている整理作業の様子を見学しました。
子どもたちは,学校の教科書でならった土器や石器の本物を見たり,昔の人々の暮らし方を聞いたりして,驚いていました。
これからもこのような活動を通して,地域の歴史や文化を大切にする気持ちを育んでくれることを期待しています。
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かごしま遺跡フォーラム2022報告
令和4年7月9日(土)に,「かごしま遺跡フォーラム2022~中津野遺跡と掘り出された南さつまの歴史と文化~」を,南さつま市の金峰文化センターで開催しました。
第9回目となる今回のフォーラムは,令和3年3月に開通した国道270号宮崎バイパス工事に伴って,平成18年度から平成29年度まで発掘調査を行った「中津野遺跡」とその周辺をテーマに,国内最古級の弥生時代前期後半(約2,500年前)の船の一部(舷側板)など,地域で掘り出された遺跡・遺物から南さつまの歴史的特性を紹介しました。
当日は,前鹿児島県考古学会会長の本田道輝氏による講演,南さつま市教育委員会の新屋敷久美子氏・橋口亘氏,当センター職員の鮫島えりな文化財研究員が発表を行いました。
本田道輝氏の講演では,中津野遺跡周辺が県内でも有数の遺跡の密集地であることが説明され,縄文時代・弥生時代の代表的な遺跡が紹介されました。
新屋敷氏の発表では,古墳時代から古代の遺跡の紹介があり,「阿多」と刻書された土器が見つかっていることなどが報告されました。
橋口氏の発表では,南さつま市の万之瀬川流域において,中世から近世の海外産の希少な遺物が多数発見されており,対外交流の歴史について報告がありました。
鮫島文化財研究員の発表では,中津野遺跡の調査の経過や主な成果,そして今回重要な発見となった弥生時代の船の部材の発見の様子とその特徴について報告がありました。
その後のパネルディスカッションでは,当センター寺原徹調査課長が司会を務め,南さつま市の遺跡や歴史について意見交換が行われました。また,会場からも質問があり,発表者たちが真摯に答えていました。
今回のフォーラムを通して,南さつま市には多くの遺跡があり,歴史・文化面でも重要な発見が多くあったことを紹介できました。
今後も,郷土の文化財についての普及啓発を続け,地域の歴史を紐解く一助となればと思います。
※ 中津野遺跡の出土遺物や船の部材は,南さつま市の「歴史交流館金峰」で展示中です。ぜひ,現地でご覧ください。
※ 当日の講演・発表の様子は,鹿児島県立埋蔵文化財センターのYouTubeチャンネルで公開予定です。準備ができましたら改め紹介いたします。
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照信院跡(曽於郡大崎町)の発掘調査現地公開
令和4年6月24日(金)に照信院跡の発掘調査成果について,現地公開を行いました。
平日の午後の開催にも関わらず,自治会長さんをはじめ約20名の来跡がありました。
最初に,大崎町の史跡ガイドブック「おおさきの歴史を旅してみませんか」の執筆に協力している鳥越氏から,照信院跡の古代から明治における概説紹介が行われました。28か所の坊(僧の住居や宿舎)があり,県内最大規模の修験道の寺院があったことが説明されました。
発掘調査については,『三国名勝図会』の配置を参考に行い,東西に各1条の溝を発見し,この溝の内側(現熊野神社を中心)には,玉砂利状の小礫(3㎝大の石)が多く敷き詰められ,遺物(薩摩焼や土師器)が出土したこと,また,その溝を挟んだ内側は,聖域として区画された場所の可能性があり,『三国名勝図会』にある回廊付近にあたると考えられることなど,絵図と発掘調査の成果が一致したことなどを報告しました。
また,出土遺物についても,懸仏(かけほとけ:銅などの円板に仏像を鋳たものを付けたり浮き彫りにしたりしたもの。寺社の堂内に懸けて礼拝したもの)の一部と考えられる華甁(けびょう:仏前に花を供えるのに用いる壺)や,13世紀の青磁などを紹介し,参加者からはいろいろと質問がありました。
地元の方々からは,小さいときの現地の記憶や,祖父母や親から伝承された貴重な情報をいただきました。
15時頃からは,大崎コミュニティラジオに急遽出演し,照信院跡の調査成果をより多くの方に広報することができました。
今回の現地公開は,地元の方々の関心の高さをヒシヒシと感じるものとなりました。
※ 現地公開の当日資料はこちらからダウンロードできます(PDF)
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第2整理作業所
今年度から当センターでは,霧島市の旧福山中学校でも整理作業を行っています。
教室ごとに,実測やデータ処理などを行っています。作業場所が教室なので,黒板が利用できたり,棚を利用したりと,便利なこともあります。窓からは桜島も見えて,開放的です。
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